菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

都会の憂鬱を飄々と謳う

おぎやはぎ BEST LIVE 「JACK POT」 [DVD]

おぎやはぎ BEST LIVE 「JACK POT」 [DVD]

・本編
「騙されやすい男」(from「#1 メガネびいき」)
「○○ではない」(from「#2 週末ロマンテイスト」)
「地球儀を選ぶ基準」(from「#1 メガネびいき」)
「それを知っている」(from「#3 DOG LEG」)
「レンタルビデオ」(from「#1 メガネびいき」)
「可能性があるならば…」(from「#3 DOG LEG」)
・東京ヌード再演(客演:ドランクドラゴン東京03)
「奇妙な心のつながり」(from「#1 喧嘩プロフェッショナル」)
「立花バトミントンクラブ」(from「#2 女」)
「パッションに焦がれて」(from「#1 喧嘩プロフェッショナル」)
・特典
「Discussion!」(出演者楽屋トーク)
「リアルタイム解説」(副音声)

サラリーマンの経験もある知的コンビ、おぎやはぎの単独ライブで披露され続けてきたコントの傑作選ライブを収録。既にテレビではそれなりの知名度のあるコンビであるおぎやはぎがやる傑作選ライブ。おそらくこれを、最後のネタDVDとするつもりだったのだろう。これ以後、おぎやはぎは単独ライブ公演を行っていない。なにやら寂しいですなァ。

それなのに、どういうことだろうか。ベストライブのはずなのに、ここまでやりたい放題やっちゃって、良いんだろうか。矢作がいつもの優しさをやんわりと捨て去り、徹底的に小木を騙し続ける「騙されやすい男」を筆頭に、日頃に小木が矢作に対して抱いている必要以上の愛情がカタチになってしまったかのような「○○ではない」、小木演じる教師が教え子に告白するというロリータ変態路線を突っ走った「可能性があるならば…」と、やたら濃密な人間裏世界を孕んだコントばかりが繰り広げられている。おぎやはぎというコンビが、都会の憂鬱を一気に吸い込んで、自己流の飄々とした雰囲気でアレンジしている今風のコンビであるということが、ありありと表れたDVDであると言って良いだろう。

思えば、おぎやはぎのコントに登場する人間というのは、結構リアルに存在しそうな人物ばかりなのである。怪しい商品を買わされそうになる人、店員が戸惑う奇怪な行動をとる変な客、バイトの後輩に偉そうな態度を取る先輩。それはいずれも、近年の都会に潜んでいそうな変人たち。劇団ひとりが『都会のナポレオン』を自称するよりも早く、おぎやはぎは“都会”をコントで演出していたのだ。