菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『夏への無意識』

RETROSPECTIVE-CITYBOYS LIVE![BOX3] [DVD]

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誰もが、夏に期待する。恋人が見つけられるかもしれない、海で泳いだら楽しそうだなあ、山登りをするのも良さそうだ……と、そういう行楽関係に係わらず、夏というのはどうも……頭の念頭に、さりげなく置いてしまうような季節らしい。その期待には、いつも裏切られる。いや、もしも裏切られていなかったとしても、裏切られなかったことを、人は忘れてしまう。夏というのは、そういった儚さも持ち合わせた、奇妙な季節の様子。そんな季節の切なさを、存分に引き出したコント公演、それが『夏の無意識』。それまで客演を迎えて公演を行うことが多かった、シティボーイズが久しぶりに、三人だけで行った公演である。

三人のサラリーマン風の男たちが、公園で時間を潰している。実は男たちは無職で、それぞれ別々の場所で時間を潰していたが、それではあまりにも孤独なので、三人で公園に集まって時間を潰していたのだ。その日は、落ちていた書類に通し番号を打つことになった。その労働には達成感があるが、お金は稼げない。そこで、男たちは考えた。何処かの企業から下請けの仕事を受注して、それを公園で片付けていけば、金も稼げるし、時間も潰せると。つまり、公園で会社を経営しようと考えたのだ。彼らはその会社を“漂流商事”と名づけ、様々な仕事を片付けていく。

この通称『漂流商事』が、この公演全体を表していると言っても、過言ではない。とにかく面白いのだが、どうも徹底的に、この公演からはペーソス感が漂っているのだ。公園で企業を起こし、公園で仕事をしている三人の中年。捨てられてしまったモノたちの生まれ変わりが、沼で広げる雑談。天狗であるということを理由に、どんどん卑屈になっていくアルバイター。そして、捨てられた犬と壊れかけのロボットの旅路。その全ての世界観は歪んでいてオカシイのだが、その全てのコントから、ひたすらペーソス感。物悲しさが、滲み出まくっているのだ。まるで、常に、夕焼けであるかのように。徹底的に寂しく、切ない。だけども、やはりこの公演はコミカルで、バカバカしく、面白いのだ。中年じゃなくては出せないこの味を、堪能していただきたい。