菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

温故知新の『アチャラカ再誕生』

アチャラカ再誕生 [DVD]

アチャラカ再誕生 [DVD]

古いと思っていたものが、実はずっと新しいものだった……ということは、昔から頻繁に発見されることである。例えば、落語の世界などがそうだ。とても古いスタイルの芸だと思われやすい落語も、そのネタ自体は非常に新しい……と、落語論をぶっても仕方がない。そもそも、僕は落語に疎い。論をぶつことが、そもそも出来んのだ……話がズレっぱなしだ。修正しよう。そういった古いモノの中に、“アチャラカ喜劇”なるものがあった。三木のり平エノケンによってによって、大正・昭和に発展した軽演劇、それが“アチャラカ喜劇”である。この“アチャラカ喜劇”を復活させようと結成された演劇集団が、空飛ぶ団五郎一座である。そして、彼らの第一公演『アチャラカ再誕生』を収録したのが、このDVDである。作家にはいとうせいこう井上ひさしケラリーノ・サンドロヴィッチ筒井康隆別役実を迎えている。出演にはくりぃむしちゅー住田隆ビシバシステム)、中村有志三谷幸喜などを迎えている。……出演に、三谷幸喜
公演の収録時間は二時間以上。団五郎一座という劇団が披露する軽演劇と、その舞台裏の様子を描くという設定の舞台である。基本的にはナンセンスな内容がメインになっているため、非常に僕好み。ただ、脚本家が五人もいるためか、演目ごとの作品に対する印象というか……面白いと思える演目と、面白くないと思える演目が極端だ。作品ごとの個性が強すぎる、と言えば褒め言葉になるのかもしれない。個人的には『キュリー夫人』『現代詩人、かっぽれを考える』『ボノボ』『死刑台の男』が気に入った。基本的にはブラック・ユーモアが好きらしい。ひょっとしたら、同じ脚本家なのかもしれない。よく分からん。とにかく言えるのは、基本的に三谷幸喜がオイシイ役ばかりを演じているということだ。脚本家には参加していないのに、とにかく三谷氏が良い位置をキープし続けていた。あと、くりいむ上田氏のツッコミがやけに生きていた。言葉で説明するのは難しいのだが、ひたすらテンポが良いのだ。かなり練習したのだろう。素晴らしい。
そんなこんなで、それなりには面白かった『アチャラカ再誕生』。いわゆる軽演劇に耐性のある人なら、そこそこには楽しめるのでは無いでしょうか……ちなみに、副音声のコメンタリーは今ひとつでした。舞台の内容に触れるというよりは、寿司屋で思い出話をしているだけのような感じで、なんだかアレでした。残念、無念。

・本編
『発明後のパターン1』『台なし山荘』『楽屋1』『らくだ』『アルカイダの伝令』『夕焼け小焼けで』『キュリー夫人』『楽屋2』『I LOVE YOU(独唱)』『現代詩人、かっぽれを考える』『ボノボ』『おお、ブレネリ(暗がり)』『死刑台の男』『楽屋3』『時代劇がうまくいかない』『発明後のパターン2』
・特典
『コメンタリー(いとうせいこう×ケラリーノ・サンドロヴィッチ)』『空雲劇団結成秘話 いとうせいこう×ケラリーノ・サンドロヴィッチ』『未公開コント「台なし山荘2」』『番組CM』『リハーサル風景(静止画)』『「アチャラカ」とは(静止画)』