余裕の苛立ち『NETAJIN2』
- 出版社/メーカー: R and C Ltd.
- 発売日: 2007/02/28
- メディア: DVD
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『NETAJIN2』は先にも書いたように、2006年11月11日に行われた陣内智則のソロライブの様子を収録したものである。タイトルを見ても分かるように、2004年8月11日に発売された『NETAJIN』の続編である。この『NETAJIN2』を購入するより以前から、僕はこのDVDの内容に多大なる不安を抱いていた。前作『NETAJIN』に対して『NETAJIN2』は、価格が上がっているのに収録時間が短いのである。『NETAJIN』は3,150円で101分というボリューム感だったが、『NETAJIN2』は3,990円で67分である。この差は大きい。しかし、値段とクオリティは少なからず比例する。アンジャッシュの『ネタベスト』も、購入前は価格に対する収録時間の短さが気になったが、内容は非常に満足できるものだった。ひょっとしたらこれも、有意義な内容だからこそ値段が上がっているのではないか……そう思って僕は『NETAJIN2』を購入し、鑑賞したのであるが……完全に裏切られてしまった。とにかく、某番組で見覚えのあるコントばかりが収録されている。「防犯カメラ」も、「校歌」も、「忘れ物センター」も……どれもこれも、某番組で見覚えのあるものだった。かつて爆笑オンエアバトルで見かけたコントは、最後に収録されている「地球戦士ジンダム」だけだった。なんだったら僕は、このコントを見たいがためにこのDVDを買った、みたいなところがあった。かつて爆笑オンエアバトルの第三回チャンピオン大会で披露し、そこそこにスベったというコント「地球戦士ジンダム」。資料的な意味も含め、このコントは観る価値があると考えたのである……が。そもそも実際のネタを知らないから何とも言えないが、これが予想以上に酷い内容だった。詳しくは書けないが、とにかく爆笑オチで終わらせることがセオリーだった陣内智則のコント世界を、「地球戦士ジンダム」は無理やり感動オチで終わらせたのである。それ自体は悪いことではない。ただ、僕らが陣内智則に求めているものは、そういうものではないはずだ。僕の中の憤りは、巨大な風船の様に膨らんでいった。そして、一つの疑問が生まれた。爆笑オンエアバトルでは数々のコントを披露してきた陣内智則なのに、どうしてこのライブでは某番組仕様で作ったようなコントばかりを収録したのだろうか、と。少なくとも前作『NETAJIN』には、過去のコントも収録していた。一般の視聴者が某番組で見たことがあるだろうコントばかりを、どうして収録したのか。色々と考えてみたが、分からなかった。ただ、どのような理由を聞かされたとしても、僕はきっと納得することが出来ないだろう。どうしても、僕には陣内智則が余裕ゆえに手抜きをしたように感じられたためである。……無論、これは憶測である。事実かどうかなんて、分かるわけがない。
また、その変化は収録されている演目にも見られた。『NETAJIN2』では、非常に多くのエキストラを起用している。エキストラを使うこと自体は問題ではない。自身の単独ライブに後輩芸人を出演させる芸人なんて、そこら中にいる。ただ、陣内智則の場合はそうもいかない。冒頭にも書いたとおり、陣内智則のスタイルは孤独で機械的なものだった。独りぼっちの陣内が、ただひたすら独り言のようなツッコミを入れることが、いわば陣内芸の真髄、唯一のアイデンティティだった。そこに他のキャストが侵入するということは、陣内がそれまで作り上げてきた芸風を全て否定することになると言っても過言ではない。そして陣内は、その全否定をやってしまったのである。
この『NETAJIN2』は、いわば陣内智則という芸人が、芸人として終わってしまったことを証明しているようなDVDだった。無論、再び陣内が芸人として蘇る可能性が全く無いわけではない。『球根』で芸の弱さを実証したインパルスが、後に『球根Ⅱ』という名公演をやってのけたように。バナナマンが長い停滞期間を経て、再びコント師として蘇ろうとしているように。『NETAJIN3』が生まれる頃に、陣内氏が如何なるコントを披露してくれるのか。期待したいと思う。
・本編 「オープニング」「防犯カメラ」「オーちゃん〜ペット禁止の巻〜」「校歌」「一度やってみたかった事 PART.1」「犬」「アリバイ」「忘れ物センター」「一度やってみたかった事 PART.2」「プロポーズ」「地球戦士ジンダム」「エンディング」 ・特典映像 「一度やってみたかった事 PART.3」 ・収録時間:本編67分+特典映像5分