菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

開け、眼。『紳竜の研究』一枚目<紳竜の絆>

紳竜の研究 [DVD]

紳竜の研究 [DVD]

2006年3月22日、沖縄県にいた島田紳助の元に松本竜介が倒れたという電話が入った映像が、このDVDによって映された最初の紳助の映像だった。そこに映し出された紳助は、テレビに映されている“芸人の紳助”ではなかった。そこに映し出された、連絡を受けて興奮したのか顔は赤く腫れ、動揺しつつも流暢な喋り口で芸人仲間に竜介のことを伝える紳助は、あと二日で五十歳を向かえる“長谷川公彦”という私人でしかなかった。島田紳助松本竜介によって結成されたコンビ“紳助竜介”は、1977年に当初、紳助がコンビを組もうとしていた明石家さんまに竜介を紹介されたことがきっかけで結成された。紳助竜介はあっという間に漫才師として急成長を果たし、MANZAIブームの代表的若手コンビとして名を馳せた。しかし、1985年に紳助がダウンタウンの漫才を見て自らの時代が終わったことを覚り、そのままコンビを解散してしまう。そして、2006年。二人が50歳になるこの年に、コンビを一度限りに復活させる企画が立てられた矢先に、松本竜介が倒れた……。『紳竜の研究』第一章<足跡>には、紳助竜介というコンビがどういうコンビだったのかを様々な芸人に聞いたインタビューと、松本竜介の死を知った島田紳助の行動を密着した映像を交差させたドキュメンタリーになっていた。そこに笑いは皆無。皆無の筈なのだけれども……時折、映し出される紳竜漫才のカット映像では、どうも笑ってしまった。ダウンタウンの登場をきっかけに姿を消した紳助竜介だが、彼らの笑いは決して一過性のものではないということを感じさせられた。
そして後半、第二章<手段>。こちらは前半と打って変わって、冷静に笑いについて語っている紳助の姿を見ることが出来る。2007年3月、NSCにて非公開で行われた紳助による笑の特別講義。芸人の卵たちに向かって、ちょこちょこ笑いを挟みつつも真剣な「笑い」の講義が行われている。最近、『東大×爆笑問題 東大の教養』を見たことをここに書いたが、雰囲気はそれに似ていたように思う。人によっては退屈に思えるかもしれないけれども、成功した芸人が芸について語る姿は貴重に思う。特に紳助は芸人の中でも芸を研究している人物である……だから、芸人を志している人は、これを観るべきではないかとは思う。紳助を支持していようと、してなかろうと。
二枚目<紳竜の証>については、後日。

・収録内容
第一章「足跡」/第二章「手段」
・収録時間:151分