菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

プレイバック『NOTA〜恙無き限界ワルツ〜』

シティボーイズの三人にゲストを加えたメンバーでのライブ、シティボーイズミックスが開始されたのは、2001年のこと。これ以降、シティボーイズライブの演出家が三木聡から細川徹大人計画)へと変わり、出演ゲストも以前より多種多様なメンバーへと変化した。そして、今回紹介するライブ『NOTA〜恙無き限界ワルツ〜』は2003年に行われたシティボーイズミックスライブである。ゲストには以前からシティボーイズとは懇意の関係とも言える中村有志、テレビの女性タレントとして確固たる地位を築いているYOU、本来は女優だがイラストレーターとしても活躍している五月女ケイ子を迎えている。なお、音楽担当はKKプロデュース公演『PAPER RUNNER』でも音楽を担当していた西寺郷太ノーナ・リーヴス)。
シティボーイズのライブDVDは大概、面白いと評価している僕なのだけれども、この『NOTA』というDVDだけは、どうも評価できないままだった。おそらく、著作権が発生する音声を使用しているためか、作中に何度も静止画像が用いられてしまっていることが、その理由だと思う。どれほど面白いコント作品でも、途中で余計な茶々が入ってしまっては、楽しく鑑賞することが難しくなる。一方で、僕にも幾つかの原因があった。まず、僕は女性がコントに参加することを芳しくないと無意識のうちに思っていたところがある。男尊女卑と言えば大袈裟になるが、それに似た思考ではあったように思う。それから、ジャケット写真にも違和感があった。それまでのシティボーイズライブのDVDはそこそこにスタイリッシュなものであったのに対し、『NOTA』のジャケット写真は妙に和風だった。そして、それが僕に“勢いの弱体化”を感じさせたのである。……捻くれてるなあ。しかし、最大の原因は、このDVDを見る前にネタバレ文章を読んでしまったことに間違いない。結局のところ、僕自身に最大の原因があったのだ。アマチュアお笑い評論家を名乗っている割には、実に情けない話である。
で、改めて観ると、これがとてつもなく面白い。とにかくナンセンスな世界が無意味に、無限大に広がっている。まず、冒頭のコント『加速するおそさ』が既にナンセンス満点。車を引いている中村と、車に乗っている大竹・YOU・きたろう。息を切らしながら頑張って車を引いている中村に、三人は「頑張っている姿を見せないでほしい」と要求する。その理不尽さが、妙なニュアンスのナンセンスを生む。それ以降のコントも、とにかくナンセンス。如何にナンセンスなのかは、下に書いた収録内容のタイトルを見てくれれば分かるのでは無いかと思う……実はこのタイトルの殆どが内容の主題と関係無いものなのだが、その内容の不可解さはこのタイトルたちが見事に伝えているのではないか、と思う。そんなわけで、久しぶりの『NOTA』は非常に面白い作品だった……のだが、やはり、『首の皮1枚ショー』と『シーソー公園』での静止画像には、その映像の完成度の甘さも含めて、絶望してしまった。惜しい。実に、実に惜しい。
最後に余談だが、『バカ国境を越える』のラストで涙を流しそうになったのは、僕だけだろうか。別に泣ける場面ではない。むしろバカバカしくって、笑い飛ばすべき場面なのだろう、と思うのだけれども、何故か僕はあの場面で目頭を熱くさせてしまう。きっと、国境という、命がけのボーダーラインを勢いで超えてしまうバカらしさから感じられる、ある意味で物凄い勇気に感服したのかもしれない。久方のー、そよ風。

・収録内容
『加速するおそさ』『ウエットスーツを着た弁護士・山村』『玄関におしっこをしていく犯人をつかまえるために仕事を犠牲にしている男』『壊れた性』『斜陽』『首の皮1枚ショー』『中腰の男』『シーソー公園』『バカ国境を越える』
・特典映像
『シティボーイズ語る』
・収録時間:115分