菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

プレイバック『俺道』

俺道 [DVD]

俺道 [DVD]

『俺道』。英語にすると、マイウェイということになるのだろうか。だとすれば、このライブのタイトルほど、ダイノジというコンビを表す言葉は無いと思う。お笑い芸人がネタをするということは、客を笑わせるということが大前提であるが、このコンビの場合、客の笑いのツボを押さえた上で、自らのやりたいことをオナニー的に晒しているだけの様に思われる節がある。その結果として、爆笑オンエアバトルでの活躍や、M-1グランプリ決勝への進出や、エアギター世界大会での優勝があるだけに過ぎないのだ。DVD『俺道』は、そんなマイウェイを突き進むダイノジの魅力を存分に詰め込んだ内容になっている。
DVDは、大谷ノブヒコ(現・大谷ノブ彦)の語りで幕を開ける。「10年前、今はなき、西新宿にあった旧・新宿LOFTで生まれて初めて人前で漫才をやった」……こういう語りでライブを始める芸人が、他にいるだろうか。ひょっとしたら、存在するかもしれない。実際、大谷の様なナルシスト芸人は数多に存在する。しかし、語りのなかにeastern youthやblood thirsty Butchersといったバンドの名前を入れることが出来るのは、おそらくこの男だけだろう。ダイノジの芸にはロックバンドのファンが多いということを、上手く利用している。語りが終われば、やけに格好良いロックサウンドとともに、ダイノジの紹介VTRが流れ始める。カッコ悪いほどにカッコ良さを気取る彼らの姿は、実にカッコ良い。それが終わると、遂にダイノジの舞台の幕が開く。大勢の観客を盛り上げながら、一発目に披露されたネタはダイノジのモテるショウ』だ。爆笑オンエアバトルで初オンエアを飾ったときに披露した、あのショートコントだ。ほんのサワリだけを披露し、再び暗転に入る。さあ、ダイノジライブの始まりだ。
こうして、改めてダイノジのライブ『俺道』を見ると、僕の記憶に残っているダイノジの映像よりも、ずっとナルシスト指数が高い。ドリフのバカ兄弟に対するリスペクトにも取れる『二人歩記』や、大谷が言いたいことを言っているだけのような一人舞台『ハードボイルド』、後に東京ダイナマイトがキャラクターをカバーしたことで知られている『渡り鳥A』などは、その傾向が他のネタよりも強く出ている。そして、彼らのナルシストっぷりが強く出ているだけ、ネタとしても面白い。ただ、一方でダイノジのナルシストを受け入れられる人じゃないと、この面白さは受信できないかもしれないなあ……とも思う(後に発売される『KING OF LIVE』では、そのナルシストが大衆向けになっているが)。しかし、ダイノジの芸風について、少しでも理解している人には、間違いなく満足できる出来である。もしもまだテレビで見るダイノジしか知らないのであれば、この『俺道』を観て、ずっと深いダイノジに触れていただきたい。後悔はしない、たぶん。

・収録内容
『オープニング[MY WAY]』『二人歩記』『光枝の日記』『インタビュアー』『新・声に出してみたい日本語2003?』『ハードボイルド』『バスジャック(不良と小西)』『通訳』『ブラックモグタン』『あやべと遊ぼう』『放課後』『新・声に出してみたい日本語2003?』『渡り鳥A』『前略、道の上から』『エンディング[だいすき]』『楽屋』『あいさつ』『ダイノジロック』
・特典映像
『NO WAY』『ダイノジ漫才「頑固親父」』『ダイノジ漫才「光枝の日記」』『ダイノジ漫才「検問」』『大地洋介の真実』『ドッキリ?』『大谷ノブヒコ Video Clip』『大地洋介 Video Clip』『トーク』
・収録時間:102分+特典43分
・詳細:ヤクルトホールにて、2003年8月10日収録