菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

まったり『イッセー尾形 一人芝居 草月ホール2005』

イッセー尾形 一人芝居 草月ホール 2005 [DVD]

イッセー尾形 一人芝居 草月ホール 2005 [DVD]

実は、これまでにネットで発売されたイッセー尾形のライブDVDは、ベスト盤的に過去のライブで披露した演目を再演したもの(『寄席山藤亭』)、特定のテーマに合わせたライブ(『読む! 書く! 創る! ダザイオサム』)、他の芸人を客演に迎えたライブ(『小松政夫×イッセー尾形のびーめん生活』)の三枚で、ちゃんとした単独ライブをDVDにしたものは、これが初めてだったりする。……というか、単独ライブをDVD化したもの自体、これが最初ではないかと思われる(過去のライブは、その一年の間に披露されたイッセーの舞台をコレクションしたものが殆ど)。そんなわけで、初っ端から最後まで、一つの会場でのみ行われたライブを収録したイッセー尾形 一人芝居 草月ホール2005』の紹介……ちなみに2005年は、『ピザ屋』『山田シンキロー』がベストコレクションに収録された年である(『ピザ屋』は今作に初演を収録)。
冒頭の芝居は『組合』労働組合に属する中年男性が、同組合の若手に持ち上げられる話。舞台に上げられそうになるも断る姿は、妙にリアルで良い。若手に説教してくれと頼まれて始めた説教が、ハチマキの締め方や女性のファッションだったりするところなんか、いかにも中年男性的発想で良い。中年と若手のジェネレーションギャップを上手く描いた傑作だった。それ以降も、傑作が続く。なんとなく中国系っぽい、呑気な日本人ガイドのウキウキした様子が微笑ましい『ツアーガイド』。なんだか女々しい男が、酒を飲みながらバーテンにネチネチ話しかけていくうちに、意外な展開へと堕ちていく『ひとり酒』。手馴れた感じに人を捌いていく様子がリアルかつコミカルな『指導員』など、名作・名キャラクターのオンパレード。そして、それらは全て一つ一つ、非常に個性的な色を発しているのだけれども、ちゃんと一つの作品集としてまとまってい……ない。内容のバランスがてんでバラバラで、まるで纏まろうとしていない。実に、個性的だ。……つまり、このあまりに個性的な作品群をまとめきることが出来なかったので、これまではベストコレクションとしてDVDを発売していたという……ことなのかもしれない。ひょっとしたら、の話だけど。
まあ、纏まろうが纏まってなかろうが、非常に良い公演だったことは間違いない。この八月には、2005年から2006年の間にかけて披露された演目の蔵出し集『イッセー尾形 一人芝居 蔵出し 2005-2006』が発売されるらしい。この感じで、2004年に披露されたという先生シリーズもDVDにならないものか*1と、期待しているわけだけども……どうかなー。

・収録内容
『組合』『ひとみちゃん 家政婦編』『山菜採り』『ツアーガイド』『ひとり酒』『ピザ屋』『指導員』『友子お姉さん』
・収録時間:約125分
・詳細:2005年5月5日、東京・草月ホールにて収録

*1:このシリーズから出た作品が、『イッセー尾形ベストコレクション2004』に収録された『化学教師』