菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

芸達者『epoch conte square 宇田川フリーコースターズ』

epoch conte square 宇田川フリーコースターズ [DVD]

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ユニットコントという言葉に、僕は妙な不安定さを感じる。きっと、内村プロデュースでの混合コントや、正月にやっている某スペシャル番組の様な、ギリギリのアドリブの様なものが、印象として残っているからなのだろう。いや、実際のところ、ユニットコントの多くは、あくまでも“番外編”として見られることが多く、「その完成度の甘さも一つの味わい」と言えなくもない。しかし、おぎやはぎバナナマンのユニットコントシリーズ“epoch square”には、そんな要素が全く存在しない。ここにあるのは“番外編”ではない。ここにあるのは、特別な要素を全く含まない“単純かつ完璧なコント”だ。
それにしても、このライブを観ていると、改めてバナナマンの顔面担当こと日村勇紀の演技力の凄まじさに感動を覚える。特に二本目に収録されているコント『2人の会話』での日村の演技は、神がかっている。このコントで日村は、矢作の借金を返したくないがために、最初に正義の味方を演じ、続けて何処かの国の王子を演じているのだが、この演じ分けが凄まじい。喋り口だけではなく、佇まいまで演じ分けている。そして、更に矢作に追求されたときの日村の目のそらしかたは、本当に凄い。なんなんだ、この演技力の高さは。バナナマン結成以前からコントを演じているキャリアの積み重ねを、改めて感じさせられた。
その一方で、おぎやはぎの良い人担当こと矢作兼の多様なキャラクターにも注目したい。これは『ライブ!!君の席』での矢作にも見られることなのだが、普段のバラエティなどでは控えめなキャラクターを演じ続けている矢作が、このライブでは、とにかく活発的。先述の『2人の会話』では日村を追い回す友人を綺麗に演じ、『鼻曲がり』では徹底的に嫌なことをするのが大好きな男を演じ、『遠慮ショー』ではノリノリな司会者風の男を演じる。それらを演じる矢作のキャラクターはまったく違うものなのだが、何故だか矢作が演じていることに違和感を覚えない。それらのキャラクター、そのいずれもが間違いなく矢作なのだ。元々、都会の人間関係の胡散臭さをさりげなく笑いにしてきたおぎやはぎの脳、矢作だからこそ、こなせることなのかもしれない。
……さて、ここまで二人の演者を褒めてきたが、別に残りの二人が劣っていたというわけではない。『遠慮ショー』での設楽は遠慮しない男の表情を巧みに演じていたし(ここまで非道な顔が似合う人も珍しい)、『心理の森』での小木の変態演技っぷりは万死に値すると思うし(注:褒めてます)。ただ、それを考慮しても、日村・矢作の役者っぷりは神懸っていた。日本コント史に燦然と輝くだろうライブ、是非、観ていただきたい。……下ネタ度が高いけど*1

・収録内容
『春人来たりて』『2人の会話』『TAXI』『借り物競走』『鼻曲がり』『遠慮ショー』『心理の森』『おとり』『春人去りて』
・収録時間:100分
※レンタルビデオだったため、特典は未収録。

*1:『心理の森』の下ネタっぷりは、近年稀に見る高濃度だった