菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

笑魂!『マニア向け』(360°モンキーズ)

マニア向け [DVD]

マニア向け [DVD]

爆笑オンエアバトルで、初めて彼らのネタを見たときの僕の感想は、確か「オリジナリティが無いなあ……」というものだった。実際、彼らのネタは薄っぺらで、何処かアマチュア的な雰囲気を醸し出しており、2ちゃんねるオンエアバトルのファンサイトでも、彼らがオンエアされるたびに「酷い」「つまらない」というコメントが、当たり前に繰り出されていた。そんな彼らだったが、とんねるずの番組の一コーナー、細かすぎて伝わらないものまね選手権にツッコミ役の杉浦双亮が出演し続け、だんだんと知名度を上げていく*1。その最中に発売された、彼らの初のDVD『マニア向け』。その内容は、タイトルと同様にマニアックなネタで満ち溢れていた。
DVD本編の半分を占めているショートコントについては、言わずもがなの内容。爆笑オンエアバトルで披露されていたネタと、ものまね選手権で披露されていたネタが混ぜこぜに披露されており、まさにベスト選集といったところ。その一方で、個人的には初見だったネタが幾つか収録されており、妙な嬉しさが滲み出したりした。……で、その初見のネタというのが、物凄い内輪ネタ。高校の時の学校の先生のモノマネだとか、同じクラスの生徒のモノマネだとか。普通の芸人ならば絶対に披露することはないだろうコントを、彼らは堂々とやってのけていた。そして、それは彼らの芸の本質でもあるように思えた。恐らく、360°モンキーズのネタは、根本的に生徒ノリの要素を持っている。もっと具体的に言うならば、中学・高校に一人はいた、クラスの人気モノがやっているネタに似ている。そう考えると、彼らのネタにスポーツ選手のモノマネがある理由も分かる気がする。彼らにとってウケる対象は、仮想として存在するクラスメートなのだ。しかも、そのクラスメートは女子生徒ではなく男子生徒だ。まだ野球中継が今ほどに低視聴率ではなかった頃、朝の教室で男子たちが昨日の野球中継の話題をしているところで、「昨日、こんなんあったなあ!」と言いながら選手のモノマネをする二人……を、なんとなく妄想してしまうのは、僕だけではあるまい。
そんな360°モンキーズの生徒ノリな笑いを、芸として昇華しているのが、ボケ役の山内崇による、微妙にリアルな人物描写だ。今作には、山内が様々なキャラクターを演じているシチュエーションコントが、デビューネタを含めて三本収録されているのだが、そのいずれもが山内の演じるキャラクターによって成立している。『マンガ喫茶』に登場するちょっと調子に乗ったオタクとか、『カラオケ屋さん』に登場する他人の言うことを無視してマイウェイを突っ走るおばさんは、多少のデフォルメがなされているものの、実在しうる人たちだ。今の360°モンキーズはショートコントを中心とした活動をしているが、なかなかどうして、シチュエーションコントも出来が良い。今後は、シチュエーションコントの方にも力を注いだ活動をしてもらいたい。そうすれば、ひょっとしたら、もしかしたら、大化けするかも……。

・収録内容
『ショートコント1』『コント:マンガ喫茶』『ショートコント2』『コント:カラオケ屋さん』『ショートコント3』『ロケ:先生に会いに行こう!』
・特典映像
デビューネタ『オーディション』
・収録時間:47分+特典4分

*1:その後、同コーナーにコンビで出場