菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

ジュニアで遊ぼ。『6人の放送作家と1人の千原ジュニア』

6人の放送作家と1人の千原ジュニア [DVD]

6人の放送作家と1人の千原ジュニア [DVD]

千原ジュニア吉本興業所属のコンビ「千原兄弟」の頭脳担当であり、ソロでの活動も多い。大喜利を得意とし、ライブやテレビ番組のみでなく、私生活でも大喜利を行っている。そんなジュニアが出演するライブの多くは、ジュニア自身によって脚本・演出が手がけられるものだ。そのため、ジュニアのコントの世界観は基本的に統一されている。さりげなくブラックで、どこか人間の心底に触れてくるような、そんな世界観。テレビでジュニアが見せている顔とは、明らかに一線を引いている、なんだか不気味な世界観。では、テレビでのジュニアを舞台で表現するには、どうすれば良いのか。答えは単純。企画・構成・演出を、他者に任せてしまえば良いのだ。……というプロセスがあったのかどうかは分からないが、なんとなく、そういう印象を受けた。ここにいるのは、自分で作り上げた世界を鎧としているジュニアではない。ここにいるのは、素っ裸のジュニアそのものである。……と、なんだか格好良い紹介をしたところで、中身について少々。
このライブで披露されているものうち、創作物と言えるものは『子別れ』(樋口卓治)と『福本和枝』(宮藤官九郎)だけで、残りの四本は企画物だったりする。しかも、そのほぼ全てがジュニアを追い込む企画である。例えば、『話のモルモット』(高須光聖)は、ジュニアがトークを得意としていることを利用したもので、最初に披露したトークを、そこに縛りと制限時間を加えるも、基本的には同じ内容で何度も披露させるという内容になっており、日頃、当たり前のように面白いトークを披露しているジュニアを、徹底的に困らせていた。しかし、これはまだ「トーク」という、ジュニアの得意分野を用いたもので、ジュニアにもいくらかの余裕が見られる。『24』(中野俊成)は、もっとジュニアを追い詰めている。この演目では、ジュニアは小さな箱に閉じ込められている。そして、その中で様々な課題をクリアし、最終的には脱出するという内容になっている。これはジュニアの肉体能力のみを駆使させたもので、とにかく必死に足掻くジュニアの姿を女王様的な視点から見ることの出来るものだった。……何をさせたかったんだ、中野氏。
そんなこんなで見終わった『6人の放送作家と1人の千原ジュニア』。タイトルの仰々しさに思わず身構えてしまったが、何のことはない、その内容は単純に千原ジュニアの企画ライブでしかなかった。正直、ジュニアという芸人自身に対して好意を抱いている人間でなくては楽しめない、楽しめたとしても一度二度くらい見たら飽きてしまうレベルの内容だったように思う。一つの作品ではなく、一つの記念品として手にするくらいの気持ちで手にするくらいが丁度良いのではないかと。……ただ、一度は見るだけの価値は確実にある。ジュニアのネタが気になる人は、『囚』からどうぞ。そこから入れば、初めて今作を見るよりも幾らか楽しさの度合いが上がるかもしれない。

・収録内容
『話のモルモット』(高須光聖)、『子別れ』(樋口卓治)、『24』(中野俊成)、『愛の確認』(都築浩)、『終わりから始めよう』(鈴木おさむ)、『福本和枝』(宮藤官九郎)
・収録時間:119分
・特典:企画を担当した作家と千原ジュニアによる当時を振り返った副音声