菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

笑魂!『THE男』(クールポコ)

THE 男 [DVD]

THE 男 [DVD]

かつて、男らしいということは、力強いということだった。女性が持ち上げられないような荷物を、軽々と持ち上げる。それが、男。なかなか開かないジャムの瓶の蓋を、軽々と開けることが出来る。それが、男。読むのは『タッチ』じゃなくて『巨人の星』。それが、男。そういった男らしさが、いつの間にか失われてしまって、何年が経過しただろうか。男女平等という大義名分の元に、男らしいものは少しずつ失われていった。若かりし頃に男らしさを誇示していただろう中年たちは、イタリアン臭漂う男が始めた流行でチョイ悪オヤジに憧れ始めた。若い男たちは伴侶を得るための作戦を立てるようになり、その対象となる女性たちもそういった男たちの作戦に引っ掛かるようになった。そして、そういった作戦を立てることの出来ない男たちは、二次元の世界へと逃げるようになった。男らしさ崩壊の危機である。ただ、だからといって誰かが困ったかというと、そうでもなかったりした。常に時代は、流れていく運命にある。男らしいということが求められなくなったということも、また運命なのだ。しかし、そんな時代に、その運命に逆らおうとするお節介焼きな男たちが現れた。その男たちこそ、クールポコである。
クールポコの代表作は『餅つき』である。このネタで二人は餅つきの師匠と弟子に扮し、世の中の男が情けない現状を嘆く。具体的に書くと、まず弟子を演じるせんちゃんが情けない男の回答例を師匠に説明する。それに対して、師匠を演じる小野まじめが「なぁ〜にぃ〜!? やっちまったな!」と嘆きの声を上げる。そして、餅をつきながら男らしい回答例を提示する。その行為は、まさに世の中を正す現代の侍のよう……侍は餅をつかないと思うが。ただ、彼らの提唱する男らしさは、あまりにも極端だ。オシャレな古着よりもおさがり、洗顔フォームより荒塩、シャワーより滝……思うに、彼らの笑いは「男らしいは力強さ」という思想をパロディ化していることによって起こっている。つまり、実際の彼らは男らしさを提唱しているというよりは、男らしさをネタにして一笑取っていると考えた方が正しいといえる。とはいえ、クールポコ自身は決して男らしくないかというと、そうでもない。本DVDに収録されている、クールポコの『男は黙ってみちのく旅』は実に男らしかった。
『男は黙ってみちのく旅』は、ネタとネタの間に挟まれた幕間映像である。男らしいものを求めて、クールポコは東北を旅をするだけの映像だ。その男らしいの基準も、やはり胡散臭い。「それを男らしいものとして認定して良いのか?」というものを、次から次へと認定していく。そんな旅の途中、ローカル番組に出演することになったクールポコは、そこでストリートライブの告知をする。そして彼らは、雪降る街の中、いつもの衣装でネタを披露した。その姿は、間違いなく男らしかった。男らしかったし、彼らも間違いなく芸人だということを、はっきりと認識させられたのだった。よっ、男ま……前はいらんか?

・収録内容
『餅つき1』『男は黙ってみちのく旅 第一章』『餅つき2』『男は黙ってみちのく旅 第二章』『師匠と弟子のショートコント』『男は黙ってみちのく旅 最終章』『餅つき3』
・特典映像
『小野コップ』(デビューネタ)
・収録時間:41分+特典映像4分