菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『いつもここから BEST SOLO LIVE』

いつもここから ?BEST SOLO LIVE? [DVD]

いつもここから ?BEST SOLO LIVE? [DVD]

夏だ。夏は夜とか言っていた人のことを思い出すが、僕にとって夏を象徴するものといえば、生き物の鳴き声だ。ミンミンという鳴き声が聞こえれば、ミンミンゼミを思い出す。ガチャガチャという鳴き声が聞こえれば、クツワムシ……って、これは秋の虫か。周囲が田んぼに囲まれている場所に暮らしているためか、夜中にゲゴゲゴっとカエルの鳴き声が聞こえることもある。こうして思うと、鳴き声というのは、生き物の正体を示す特徴と言えるのかもしれない。これは芸人にも言えることだ。「チックショー!」と聞こえたら、小梅太夫。「パンパンスパパン」と聞こえたら、アクセルホッパー永井佑一郎)。……えー、この流れだと、もう次に何を出すのかが分かると思われるが、お察しの通り。「悲しいときー!」と聞こえたら、そこにはいつもここからがいるのである。……そう。僕の世代(20代前半)にとって、いつもここからといえば『悲しいとき』だ。ガブ飲みコーヒーのコマーシャルで「ガブ飲みしたいときー!」と叫んでいた頃から、今年で何年になるのか分からないが、とにかく僕らの世代にとって、いつもここからは『悲しいとき』のコンビだった。その後、彼らは『エンタの神様』で『暴走族』のネタを披露するようになる。その為、いつもここからといえば『悲しいとき』の世代と、『暴走族』の世代に分かれているのが、現状である。
本作は、そんないつもここからの一つの改変期とも言える、『エンタの神様』の放送が始まった年である2003年に行われた、彼らの初単独ライブの様子を収めたDVDだ。この頃のいつもここからは、まだ『悲しいとき』が主流であるため、ジャケット写真も『悲しいとき』を意識したものになっている。収録されているコントは、『悲しいとき』『暴走族』といった人気ネタに限らず、比較的初期の作品である『えらそうなのに』『バックオーライ』など、バリエーションに富んだラインナップになっている。ただ、それでも基本的には『悲しいとき』『暴走族』などと同じ路線である「あるあるネタ」だ。彼らが一部で“あるあるの帝王”と呼ばれている所以ではないだろうか。特に個人的に好きなのが、『バカヤロー』というネタ。二人の会話の中で、片方にとって“苛立つ事象”が発生した際、その片方が苛立ちを解消するために、舞台に敷かれている布団に潜り込むというもの。一応「あるあるネタ」としての形式が取られているのだが、どっちかというと、二人の妙なテンションがおかしかった。
このDVDが発売されてから、今年で四年になる。現在、いつもここからをテレビで見かけることは、とても難しい。『エンタの神様』などの番組でたまに見かけることがある程度だ。今の彼らは、何をやっているのだろう……と思っていたところ、書店で不思議なタイトルの本を見つけた。その本とは、いつもここからのネタ担当、山田一成と、『だんご三兄弟』で知られている大学教授、佐藤雅彦による共著『やまだ眼』である。この本では、いつもここからのネタなどで見られる「あるあるネタ」を、佐藤雅彦が解説を交えて紹介するという毎日新聞での連載をまとめられていた。それをなんとなく購入して読んでいるうちに、なんだかいつもここからのネタが観たくなってきた。あれから、四年。そろそろ彼らの単独DVD第二弾が発売されても良いのではないだろうか。いや、発売されるべきではないか、と思って待っているのだけれども、まるで音沙汰がない。CONTENTS LEAGUEのほうで、なんとかならないものかなあ。お願いします。

・収録内容(43分)
『暴走族』『えらそうなのに』『バカヤロー』『バックオーライ』『ぜったいダメ!(VTR)』『売れました』『ズボン脱ぎ』『悲しいとき』『悲しいとき2』『ぬいぐるみ』
・収録:2003年3月8日、新宿シアターアプル