菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『SPOOKY HOUSE』へようこそ!

SPOOKY HOUSE [DVD]

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妙に人間臭い脚本、それでいて不気味なほどに仕掛けられた伏線ロジック。これまでに何度か後藤ひろひとの作品を観てきた僕だけども、そのいずれの作品に対しても、そういう感想を覚えた。とにかく、後半の展開が読めない。読めないのに、ちゃんと前半に仕掛けられた伏線を回収している。ええい、後藤ひろひとの作品は化け物か!(よく分からんネタ) しかし、改めて考えてみると、後藤ひろひとのスタイルは三谷幸喜に似ている。先に書いた後藤作品に対する感想は、三谷幸喜作品に対する感想としても、十二分に通用することからも、その類似性がよく分かる。ただ、後藤ひろひとの作品は、基本的に暗い。アングラというか、ダーク。平気で人を殺しちゃうような、そういう雰囲気を持っている(というか、実際に過去の作品で何人も殺してるもんなあ)。おかげで、三谷作品ならば楽しんで見られる伏線が、後藤作品においては不気味に感じる。なにせ、見ているほうはいつ何処で人が死ぬか分からない。死なないかもしれないけど、死ぬかもしれない。このハラハラ感が、後藤作品にはあるんだなあ。……で、今回の『SPOOKY HOUSE』。これは、吉本興業所属のコメディ集団“Piper”名義で行われた舞台である。とどのつまり、作品自体もとってもコメディ。でも……後藤ひろひとのことだから、何かやらかすのではないだろうか。コメディだけど、人を殺したりするんじゃないだろうか。そんなドキドキな気持ちで、鑑賞してみた。
まずは簡単にストーリーを。館の主が自殺して以来、無人の屋敷に住み着いている三人の家族。三人は勝手に住み着いているとはいえ、平穏な日々を過ごしていた。しかしある時、ある雑誌に自分たちの住んでいる館が呪われた無人の洋館として取り上げられてしまう。このままでは、雑誌やテレビの連中が押し寄せてくるかもしれない……そう思った三人(というか、親父)は、お化けの扮装をしてやってきた人間を驚かし、追い出す計画を立てる。そして、そこに何処かの撮影クルーがやってくるのだが……。
勘違いが勘違いを呼ぶ展開は、さすがと言ったところ。三谷幸喜的に、分かりやすくバカバカしいボケ展開がエキサイトしていて、実に楽しめた。しかし、一方で独特のアングラ感というか、スプラッタホラー的な要素も混在させており、後藤ひろひとならではの世界観を作り出せていたのではないかと思った。やっぱり、三谷作品には無い緊張感があるよなあ、後藤脚本には。どっかで誰かが死んでしまうんじゃないかという緊張感が、今回も満ち満ち。エンディングが近づくのに比例して、どんどん緊張感が増していく感じが、実にオッソロシかった。
あ、勿論のことながら、役者陣の活躍にも目を見張るものがあった。Piperのスキンヘッドこと山内圭哉演じるヘタレ親父の演技は素晴らしいほどにヘタレだったし(ヘタレ声が、また上手い!)、竹下宏太郎石丸謙二郎による小悪党コンビの息の合ったダンスも素晴らしかった。あと、他の人たちも素晴らしかった!(略すな) ただ、Piperとしてのコメディ舞台だからなのか、ちょっと、吉本新喜劇臭い雰囲気が出ていたような気も。いや、嫌いじゃないんですけどね、吉本新喜劇も。嫌いじゃないんですけど、ちょっと……んー。最終的なオチをああすると、どうしてもそういう雰囲気になっちゃうのかなあ。難しいところです。
何はともあれ『SPOOKY HOUSE』。あまり演劇に興味の無い人でも楽しめる内容になっていると思います。興味があれば、是非是非。あ、最後に余談。特典映像の『PBSドキュメント』は、某情熱大陸のパロディでしょか?

・出演
篠原ともえ・川下大洋(Piper)・山内圭哉(Piper)・楠見薫・平田敦子・廣川三憲・竹下宏太郎(Piper)・石丸謙二郎後藤ひろひと(Piper)
・特典映像
『4/5だよPiper全員集合!』
『あっちのバックステージツアー』
『B&Bのダンスレッスン』
『PBSドキュメント リーダー川下大洋に迫る!』
・収録時間:99分+特典49分