当たらずも遠からず『つかじの無我 〜12人の証言者〜1』
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2007/07/18
- メディア: DVD
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『つかじの無我 〜12人の証言者〜』は、リハーサル・台本の存在しないアドリブオンリーのドラマ番組だ。「殺人事件を調査していたノンフィクションライターの塚地は、真相にたどり着いた途端に、調査に費やした過去一年間の記憶をなくしてしまう。そんな塚地の元を訪れる、なんだか怪しい訪問者たち。彼らの証言を元に、塚地は再び真相にたどり着こうとする」という設定だけが、そこにはある。それ以外は、まったくのアドリブで構成されている。
以上の内容を先に聞いていた僕は、『つかじの無我 〜12人の証言者〜』を、てっきり『スジナシ』の様な番組なのかと思っていた。笑福亭鶴瓶がゲストとアドリブだけでドラマを繰り広げる『スジナシ』と、ほぼ同じプロットで出来ているように思ったからだ。しかし、考えてもみれば、鶴瓶には具体的な役が当てはめられていないのに対し、塚地には決められた役がある。これはつまり、塚地の役の自由度の低さを意味する。結果、塚地は役を守るあまり、『スジナシ』の様に積極的なアドリブを行うことが出来ない。だからなのか、塚地の演技に窮屈さが感じられた。アドリブなのに窮屈とは、これ如何に。あと、客の笑いが存在しない(いわゆる「ワンシチュエーションコメディ」にも関わらず、客を入れていなかった)ため、笑いの部分が微妙にぼやけてしまったことが、非常に惜しかった……というのが、第一回放送「大倉孝二編」を見た感想だった。第二回放送「佐藤江梨子編」では、その笑いの部分が明確になっている。第一回ではあくまでもサブポジションであり続けたきたろう(大家役)が、第二回からは二人のやりとりに参加し始めたのである。しかも、ただ参加するだけではない。徹底的に自由なポジションから、本当に自由なキャラクターとして参加しているのである。つまり、塚地でも鶴瓶でもない、第三のポジションをきたろうが見出したため、「きたろうが登場すると、確実に非常識な笑いが生まれる」というパターンが出来たのである。だからって、サトエリの尻を堂々と触っていたのはどうかと思うが(笑) 第三回放送「生瀬勝久編」も、そのノリで乗り越えていたので、今後しばらくはこのパターンで行くつもりなのではないかと思う。
この『つかじの無我 〜12人の証言者〜』、某サブカル誌では「塚地武雅の新境地」として取り上げられていたが、現時点ではむしろ「きたろう良いトコ取り」といったほうが正しいように思う。それはそれで面白いけれど、このままの塚地はバラエティタレントとしての塚地と大して変わらない。第二巻ではどうなっているのか。ちょっとの期待と大きな不安を背負いながら、待ち望んでみる。
最後に、各ゲストについて少し。大倉孝二は一発目ということもあってか、塚地と同様にちょっと窮屈に感じていたように思えた。まあ、もともと我の強い芸風ではないので、一発目に丁度良い配役だったのではないかと。佐藤江梨子は、とにかく素の演技の上手さに驚いた。見た目のイメージでただのバカだと思っていた自分が大いに恥ずかしい。ただ、役者としての上手さを最も引き出せていたのは、やはり生瀬勝久だったように思う。登場から最後まで、良いバランスの展開を作り出していた。ゲストの真の腕を見ることができるという意味でも、この番組は面白いかもしれない。
・出演 塚地武雅・きたろう・鈴木拓 ・ゲスト出演 大倉孝二・佐藤江梨子・生瀬勝久 ・特典映像 「つかじの無我 座談会」(塚地×きたろう×鈴木) ・収録時間:約130分