菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

プレイバック『NOT FOUND あるいは、レイヴ・ウィズ・ザ・キャッチボール・シスターズ』

シティボーイズDVD-BOX RETROSPECTIVE-CITYBOYS LIVE! [BOX2]

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1995年に行われた『愚者の代弁者、うっかり東へ』、1996年に行われた『丈夫な足場』、そして1997年に行われた『NOT FOUND あるいは、レイヴ・ウィズ・ザ・キャッチボール・シスターズ』(以下、『NOT FOUND』)と、1998年に行われた『真空報告官大運動会』。これらの四公演が行われた頃は、シティボーイズにとって一つの全盛期と言われている。作・演出を担当している三木聡の世界観が純粋にバカバカしいことと、これら四つの公演の全ての客演にファンの間では最も人気の高い中村有志いとうせいこうを招いていることが、その理由ではないかと思う。その中でも、異色の雰囲気を醸し出していた公演が、この『NOT FOUND』である。とはいえ、その内容自体は、他の三公演と大きくは変わらない。ただ、この公演を収録した場所が日比谷野外音楽堂だったことが、その雰囲気に大きな影響を与えている。特に音声に対する影響が大きく、野外ならではの雑音がマイクに入り込んだり、演者のピンマイクの調子が悪くなったりもした。
肝心の内容については、先にも書いたように他の三公演と大きくは変わらない。ただ、一つの全盛期の中の一公演であるとも書いたように、そのクオリティは非常に高い。まず、ライブのオープニングを飾っている演目『毛皮男たち』では、抽選会場で夏も近いというのに毛皮を着ている男たちと遭遇する、いとうせいこうの困惑した表情が非常におかしかった。いとうせいこうは困惑した表情を浮かべさせると、本当に上手い。一方の毛皮男たちの「花嫁のデカい頭」「カレーのたれ」「チャーハンにハチミツ」等のフレーズが飛び出す会話も、たまらなくナンセンスで良い。これだけで既に腹いっぱいなのに、コントはまだまだ続く。大竹以外の出演者が全員女装してやりたい放題の『夫と妻』、会社からあまり必要とされていない人たちで構成された「緊急対策部」でのやりとりを描いた『外された人達』、異なった境遇の二人がある場所で出会うまでの様子を描いた『二つの風景の消失点』などの秀作で、じわじわとシティボーイズの世界が身に沁みてくる。
中でも傑作なのが、次の公演でリメイク版(?)も作られたコント『廊下を走る人達』だ。このコントは、ある旅館にやってきた五人がその旅館の廊下で繰り広げる人間模様を描いたコントなのだが、とにかく展開が忙しい。既に中年の粋を飛び越えようとしている五人が、ステージ上に作られた長い廊下を全速力で駆け抜ける。しかも、かなり下らない理由で。その姿はなんとなく、自動販売機で忘れられたジュースを獲得するために舞台を駆け抜けていた、『愚者の代弁者、西へ』の占い師たちを思い出した。
そんなわけで、個人的には非常にオススメな公演『NOT FOUND』なのだが、問題が一つ。その問題は、この公演の最後に披露されているコント『新しい祭り』にある。この演目自体は非常に面白いのだけど、中盤、過去の公演を見ていないと理解できないギャグが含まれており、初めてシティボーイズのライブを見る人には向いていないのである。そんなわけで、この公演を見るときは、先に『丈夫な足場』を見てからにしていただきたいと思う。DVD-BOXで買うと、二本ともくっついてくるぞ!(営業か?)
ちなみに、このライブのタイトルが当ブログ「NOT FOUND−演芸妄想ノート−」(2007年9月現在)のタイトルの由来になっている。公演自体にはそれほど思い入れは無いのだが、この公演の音楽がとにかくカッコ良かったので、なんとなくタイトルにした。その音楽もCDになっているので、興味のある人はちょっと手を出してくれたらなあ……と思う。いや、ホントにカッコ良いから!