孤高の男『バカリズムライブ 宇宙時代特大号』
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2007/11/21
- メディア: DVD
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そういえば、バカリズムはコンビ時代の頃から、計算されたネタを作り出していたように思う。ちょっとだけ間違った日本語で会話を展開させる『屋上』、日常のちょっとした事物を仕事として取り上げる『影の仕事』、一人の男がどん底に落ちていく様子をラジオ体操に被せて描いた『ラジオ挫折』など……そのネタの無駄の無さは、コンビ時代もピン時代も変わりがないと言えるだろう。いや、むしろピン芸人になって以降のネタのほうが、コンビ時代よりも進化している感がある。
コンビ時代のバカリズムは、コントの展開でじわじわと客を引き込むスタイルのネタが多かった。それはつまり、コントによる笑いの起爆に時間がかかる、ということでもある。しかし、ピンになったバカリズムは、最初のインパクトで客を引き込んだ後で、笑いを構築していくタイプのネタを作るようになった。例えば『ヌケなくて…』というコントは、股間にビデオデッキがくっついている状態が非常に強烈だったし、『NHSNJG』というコントでは蝶を模った仮面が目を引いた。それはつまり、バカリズムが一般向けの笑いを作り出せるようになったということであり、同時に、バカリズムが一般の人にもウケる笑いのスタイルを発見したということでもある。
しかし、一般に知名度を得るようになったバカリズムは、再びコンビ時代のスタイルを見せるようになったようだ。冬を好み夏を嫌うという外国人の独白『冬ジョンソン』、官能小説に野球の用語を組み込んだ怪作『野球官能小説』、死んだ男が何処へ向かえば良いのか試行錯誤する『イケなくて…』などのコントは、コンビ時代のバカリズムのスタイルを、そのまま継承していると言っても過言ではない。
ひょっとしたらバカリズムは、イッセー尾形やラーメンズと同じ手法を用いようとしているのではないだろうか。つまり、芸人としての知名度を上げたあとで、その知名度を利用し、ライブを中心とした活動を展開させていくという、ライブ中心に活動する芸人がよく取る手法だ。少なくとも、バカリズムはタレントに向いている芸人ではない。……ところで、この後に行われた単独ライブ「生命の神秘」も、DVDになるという話を耳にした。この予想が単なる空論となるか、否か……。
・本編(61分) 『ま行時代』『ヌケなくて…』『冬ジョンソン』『NHSNJG』『野球官能小説』『泣き男泣く』『トツギーノ』『九龍の拳』『イケなくて…』『ぱ行時代』 ・特典映像(22分) 『プロレス官能小説』『宇宙辞典』
地味に『冬ジョンソン』がオススメです。