菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

なんという期待外れ『弩スピードワゴン2』

弩スピードワゴン VOL.2 [DVD]

弩スピードワゴン VOL.2 [DVD]

12月5日に、スピードワゴンが単独ライブDVDを発売する。その話を聞いたときから、僕は期待に胸を膨らませていた。12月5日といえば、M-1グランプリの準決勝直前。そして、スピードワゴンは準決勝に出場することが決定している。つまり、このDVDはスピードワゴンの漫才決意表明のようなものだ、と思ったからだ。
そして、やってきた12月5日。amazonでは珍しく、発売日当日にDVDが到着した。バナナマンの単独ライブDVD、上野顕太郎の単行本、チュートリアルの単独ライブDVD……そして、スピードワゴンの単独ライブ『弩スピードワゴン2』。裏ジャケットで収録内容を確認すると、漫才が四本も収録されている。いよいよ、胸がリオのカーニバル状態になる僕。収録内容次第では、彼らがM-1の決勝の舞台に立てるか否かが決定するのではないか……と、そこまで考えていた。いや、この時期に発売を試みたのだから、そう考えるのが普通の反応だと思う。少なくとも、僕はそうだったのだ。しかし……その期待は裏切られた。
先にも書いたように、このDVDに収録されている漫才は四本だ。一本目の漫才は、スピードワゴンらしい青臭さの入り混じった漫才。しかし、これはあくまでもスピードワゴンらしい漫才”を彼ら自身が再現しているような出来で、特別に新しさが見られる漫才ではなかった。その次の漫才は、お得意の創作漫才。二人が創作するクイズのやりとりはコミカルだったが、だんだんと稚拙な方向へと流れていき、とても面白いものとは言えないものだった。これが単独ライブでなければ、とても冷えた空気が流れたのではないかと思う。この時点で、僕はとても不安になっていた。仕方ない。漫才は残り二本だし、ライブ自体も残り半分くらいになっていた。
三本目の漫才は、小沢の夢の相談を井戸田が受けるという、これまたお得意の相談漫才。途中でボケが入れ替わるという漫才というのは、彼らにしては斬新だったが、如何せん面白くなかった。漫才自体よりも、二人のほのぼのしたやりとりを見せる漫才だったように思う。いよいよ不安になる僕。大丈夫だろうか。最後のネタは、NHKの番組『プロフェッショナル』をパロった漫才。これまたこれまた、スピードワゴンお得意のスタイルである。流石にライブ最後のネタだけあって、これはれっきとした新作漫才だった。他のネタよりも完成度が高く、ちゃんと“見せるネタ”になっていたように思う。……しかし、“見せるネタ”ゆえに、そのクオリティに切なさを覚えた。過去の彼らと今の彼らを比べることが空しいことだということは分かるが、それでも、このクオリティの下がりっぷりは、見ていて切なかった。
『弩スピードワゴン2』を観終わった僕は、ふと不安になった。いくら2007年5月に行われたライブとはいえ、この漫才の完成度でM-1グランプリ決勝の舞台に彼らが立つことは出来るのか。しばらく考えた後で、「難しいだろう」という結論を出した。事実、彼らはM-1決勝の舞台に立つことが出来なかった。それが、今の彼らの実力ということなのだろう。……うーん……『弩スピードワゴン』の漫才がなかなかだっただけに、残念。
ちなみに、元ビームのイマニヤスヒサやななめ45°との合同コントは、なかなか面白かった。作りこむ漫才よりも、ああいうコントのほうにベクトルが向かっているのかもしれない。

・本編(74分)
『オープニングVTR』『漫才1(10年で変わったこと・妊娠の報告)』『スピードワゴンの仲間達(VTR)』『コント 被害者の会』『井戸田宅訪問(VTR)』『漫才2(逆クイズ)』『井戸田潤のネタ作りチェック!!(VTR)』『漫才3(行列の出来るラーメン屋)』『特別企画1 イメージ番付!』『緊急会議(VTR)』『漫才4(セミプロフェッショナル「井戸田潤」)』『特別企画2 古今東西ワンハンドレッドゲーム』
・その他の出演
島田秀平(号泣)、イマニヤスヒサななめ45°、KICK☆

最後に余談だが、M-1グランプリの予選レポを見たところによると、その予選では『弩スピードワゴン』『弩スピードワゴン2』に収録されている漫才は披露されず、旧作ばかりが披露されたらしい。……そこは、無理にでもやれよ。