菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『アンタッチャブル山崎弘也とゆかいな仲間たち』

アンタッチャブル山崎弘也とゆかいな仲間達アンタッチャブル山崎弘也とゆかいな仲間達
(2006/12/20)
アンタッチャブル

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21世紀初頭に巻き起こったお笑いブームにおいて、その評価を最も上げた芸能事務所が人力舎であったことは、誰の目から見ても明らかだったと言えるだろう。事実、『爆笑オンエアバトル』『エンタの神様』『笑いの金メダル』と、あの時代のお笑いブームを象徴する番組に、人力舎所属の芸人が必ず一組は出演し、評価されていたことからも、そのことがよく分かる。

もちろん、同時期にインスタントジョンソン劇団ひとりが所属する太田プロダンディ坂野にヒロシ、カンニングが所属するサンミュージックも評価を上げていたが、この時期の人力舎ほどではなかったように思う。

とはいえ、別にそれまでの人力舎の芸人に実力が無かったわけではない。計算された笑いのロジックに定評が合ったアンジャッシュ、勢いづいたら止まらないボケとツッコミの激しい応酬が魅力のアンタッチャブル、キャラクターコントもギャグコントもお手のものドランクドラゴン、天然なのか計算なのか分からないユル~いやりとりが新鮮だったおぎやはぎ、狂気的なボケと現実に引き戻すツッコミが度肝を抜いたキングオブコメディ……等々、売れるための要素を確かに秘めた芸人たちが、人力舎には備わっていた。

ただ、彼らには華が無かった。そして、テレビに出演する機会も無かった(当時、人力舎の筆頭芸人はライブ中心に活動していたビシバシステムを除くと、『めちゃイケ』でガヤ同然の扱いを受けていたオアシズくらいしかいなかった)。その間、ライブで評価されるネタを重視する事務所方針の下、彼らはその芸の腕を磨き続けた。

そして、やってきた若手芸人ネタブーム。彼らは、ここぞとばかりに、それまで溜め込んできたネタを、ひたすらに吐き出した。その結果……人力舎は、お笑いブームの一端を担った事務所として、一般にも高く評価されるようになったのだった。

しかし、このお笑いブームが陰りを見せるようになり、ネタには定評のあった人力舎の芸人たちも、既にバラエティで評価されていた何組かの芸人を除き、全国放送のバラエティに姿を見せなくなってしまった。

アンタッチャブル山崎弘也とゆかいな仲間たち』が発売されたのは、丁度そういう時期だった。

アンタッチャブル山崎弘也とゆかいな仲間たち』は、人力舎主催のライブ「バカ爆発!ツアー2006」の舞台、及び楽屋裏での暴露トーク・無茶ぶり企画などの様子を収録した内容になっている。一応、芸人のネタも収録しているが、むしろ裏で行われたアンタッチャブル山崎が企画するバラエティコーナーがメインらしい。

確かにこのバラエティコーナー、かなり面白かった。元々、先輩後輩の関係がユルいことで有名な人力舎だけあって、山崎が芸人たちに振るフリートークや無茶ぶりもまた尋常じゃないほどにユルく(芸人をくすぐったり、椅子に寝かせて回転させたり)、また心地良く。それでいて、しっかりとリアクションを取るんだよね。もう、ネタだけじゃなくて、こういうことも出来るんだなあ……と、妙に感心してしまった。下らないことを全力でやる美しさ。良いねぇ。どうでも良いけど、山崎にくすぐられながら「イヤだぁ~」と悶え続ける矢作は、ちょっとエロかった。

ただ、やはり人力舎の芸人はネタ命ということなのか、ネタ時間の方が長かったように思えた。……ああ、これはネタよりもバラエティコーナーの方が面白く感じられた、ということなのだろうか。んー。でも、ネタも面白かったけどなあ(北陽は相変わらず面白くなかったけれど)。

現在、お笑いブームは二度目の春を迎えている。しかし、今のお笑いブームの主軸であるショートネタブームは、舞台向けのネタを増産している人力舎にとって、とても不利な状況だと言える。事実、今のお笑いブームを代表する番組に、人力舎の芸人は殆ど顔を出していない。

ただ、このブームが過ぎ去った頃、彼らは再びバラエティに姿を見せることになるかもしれないなあ、と本作を見て思った。いや、これだけのリアクションが出来るなら、もっと売れても良いと思うぜ人力芸人。

最後に余談。どうしてバラエティコーナーに田上よしえは参加していなかったのだろう。何か事情があったんだろうか。


・本編(117分)

ラバーガール「テレビ世界偉人列伝」

キングオブコメディ「芸能人タカハシ」

北陽「OL先輩後輩」

東京03「サングラス」

田上よしえ「学生告白」

ドランクドラゴン「車掌と客」

おぎやはぎ「結婚式の司会」

アンタッチャブル「ハンバーガーショップ」

アンジャッシュ「桃太郎の紙芝居」

・特典(26分)

北陽「小野寺さん」

おぎやはぎ「小木熱唱」

東京03「ストップウォッチ」