菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『バカリズムライブ 生命の神秘』

バカリズム ライブ「生命の神秘」バカリズム ライブ「生命の神秘」
(2008/06/25)
バカリズム

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人を食ったような男。バカリズムという芸人を一言で評するとすれば、そういう言葉が浮かんでくる。思えば、コンビ時代から、そういう類いの芸人だった。日本語を破壊し続ける『屋上』、苛立ちを覚えるとスカートをワンピース『ワンピース』、人間が挫折してしまう様子をラジオ体操で表現した『ラジオ挫折』……独自の発想と卓越された演技力によって作られた「人を食ったようなコント」は、今も昔も変わらない。しいて違いを挙げるなら、コンビ時代よりも升野のセンスが剥き出しになったくらいか。

そんなバカリズムの新作『生命の神秘』。かなりシリアスなタイトルだが、演目とはまったく関係がない。テーマソングのメロディラインも、かなりシリアスだ。ただし、歌詞は「宇宙の無数の神秘の中でも生命関係は郡を抜いて神秘的」という、やはり人を食ったようなもの。確かに「生命関係は郡を抜いて神秘的」なのだが……なんだか、くすぐったいものを感じてしまう。

演目もまた同様。警察の取調べをテレビ番組のノリで行う『総合刑事』、あらゆる日常の苛立ちを昔話に例えて昇華していく『爽快昔話』、“ヘコサキ”というよく分からない場所の妄想が止まらない『ふるさと』(コンビ時代の『ジョン君』を髣髴とさせる)、犯人が来ていないために解決編をすることの出来ない探偵を描いた『熊谷さん』……オーソドックスなコントから少し離れた位置に向かっているバカリズムのコントは、ちょっと知的な様で、かなり悪ふざけな内容で、なんとも人を食っている。

それらのコントが終わり、やれやれと思っていると、そこに流れてくるエンディングテーマ。ピコピコ音の軽快なメロディに乗せられて、歌われた歌詞は「生命の神秘じゃなくても良かった」……最後の最後まで、バカリズムは人を食い続けていた。そろそろ食人鬼として隔離されるべきなのかもしれない。

ところで、今回の公演を観て思ったのだが、どうもバカリズムのライブには「雰囲気」が足りない。コント師のライブには、必ず、そのコント師ならではの雰囲気が醸し出るものだ。シティボーイズ然り、吹越満然り、千原兄弟然り。バカリズムのコントは、かなりイイ線まできているのだが、その雰囲気がもうちょっと足りない。それが見えないからこそのバカリズムとも言えるのかもしれないが……。


・本編(56分)

「プロローグ「止まらなくて…」」「オープニングテーマ」「総合刑事」「生命川柳1」「爽快昔話」「生命川柳2」

「ふるさと」「生命川柳3」「熊谷さん」「生命川柳4」「橘斬九郎」「生命川柳5」「非ハリウッド」「エンディングテーマ」

※実際の公演では「不良官能小説」「嘘男嘘をつく」も披露されたそうだが、未収録。

・特典映像(21分)

バカリズムからのメッセージ」

「事前説明講座」