菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『アントキの猪木のダーッしますか!?』

アントキの猪木のダーッしますか!?アントキの猪木のダーッしますか!?
(2008/07/09)
アントキの猪木

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テレビでネタを披露する機会の多い芸人がネタDVDを発売するのは、実に簡単だ。テレビでのイメージを反映した内容にすればいい。勿論、テレビでのイメージを読み取る技術が必要だが、それでも具体的な方向性が決まっていない状況からすれば、ずっと好ましい状況であると言えるのは明白だ。

それを踏まえた上で、今回の作品を紹介する。アントキの猪木といえば、『爆笑レッドカーペット』を中心に様々なバラエティ番組で活躍している若手芸人だ。アントニオ猪木の模倣を得意とし、ステレオタイプなアントニオ猪木の言動を日常に当てはめたコントを持ちネタとしている。アントニオ猪木をちょっと知っている人間でも面白い、実にハードルの低いネタだ。

そんな彼のネタDVDが面白くないわけがない……と思っていたのだが、これが予想外も予想外。まるで納得できない内容だった。フツーにやれば、間違いなく面白かった筈なのに。何がどうして、こうなってしまったのか。

 

まず、肝心要のコントについて。ネタ自体には、まったく欠点が見当たらない。いわゆる「アントキの猪木のコント」を披露しており、フツーに観れば確実に面白いネタばかりだった。ただ、この面白さを弱めてしまう演出が、このDVDでは行われていたのである。そう。無観客ライブだ。

コンテンツリーグから発売されている若手芸人DVDシリーズ“笑魂”の中の幾つかの作品には、芸人が無観客状態でネタを披露し、収録しているものがある。一人でネタを堪能できるという意味では良いのかもしれないが、昨今のバラエティでのガヤに慣れている現代人には、この静けさはたまらない。それが今回、アントキの猪木のDVDでも行われていたのである。何故、観客を煽って盛り上げる芸風のアントキの猪木が、無観客状態でネタを披露しなくてはならないのか。まったくもって、理解に苦しむ。マセキ芸能社は何を血迷ったのだろう。

だから、おそらく遊びの意味を込めて収録したであろうアントキの猪木メイド喫茶のオタクたちの前でネタ披露」が、最も面白かった。観客がいるという状態もさることながら、アントキの猪木とオタクたちのギャップが妙におかしく、それでいて楽しかった。最後に皆でオタ芸をやっていたのも、なんだか仲睦まじかったなあ。

この時点で終わっていれば、僕もまだ納得できていたと思う。ただ、この後の……収録時間の半分くらいを費やしていた、よく分からない密着ドキュメント! これが更に酷かった! 何が酷いって、収録している意味が分からなかったのが酷かった!

この密着ドキュメント。タイトルは「小松原裕という男 ~元気があれば何でもできる!~」という。タイトルの“小松原裕”というのは、アントキの猪木の本名である。このタイトルから、僕はマジメなドキュメンタリーが収録されていると思ったのだ。アントキの猪木という芸人の、真実の素顔が見られると期待していたのだ。しかし、これが……なーんとも残念なフェイクドキュメンタリーだったのだ。

もう、あからさまにフィクションなのである。アントキの猪木が朝に行っている体操、ロケ、事務所でのファンレター、どれもこれもがウソっぱち。で、しかも、それも大して面白くないという……。近年、芸人たちが高レベルなフェイクドキュメンタリーを作っているというのに、どうしてこんなにもチャチい内容のものを作ってしまうのか。まったく理解できない。このドキュメンタリーを削って、普通に「笑魂」シリーズとして出したほうが良かったんじゃないだろうか。

冒頭でも書いたように、テレビでネタを披露する機会の多い芸人のネタDVDを作るということは、決して難しいことではない。しかし本作は、明らかに失敗している。フツーにやれば成功していた筈なのに。なんと勿体無いことを……。


・本編(62分)

○ネタ&プロレス技解説

コンビニエンスストア」「アリキック」「カソリンスタンド」「闘魂ビンタ」「ファミリーレストラン」「四の字固め」「カーナビゲーション

卍固め」「医者」「インディアン・デスロック」「自動車教習所」「スリーパーホールド」「アントキの猪木メイドカフェ」」

○密着ドキュメント

「小松原裕という男 ~元気があれば何でもできる!~」

・特典映像(22分)

「メイキング」