菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『才』

オリエンタルラジオ 全国漫才ライブツアー 才(ザイ)オリエンタルラジオ 全国漫才ライブツアー 才(ザイ)
(2008/08/20)
オリエンタルラジオ

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未熟という言葉は、現在進行形で語ることの出来ない言葉である。何故ならば、その対象が未熟だということは、その時点では判断しようがないからだ。他者から見て、それが「未熟」であるとしても、実はその状態が「完熟」だったということは、よくある話である。それは他者に限った話ではない。自分自身でも、分からない。果たして、今の自分は「未熟」なのか、それとも「完熟」なのか。

今のオリエンタルラジオは、間違いなく「未熟」である。ガリッと齧れば甘みを感じることはあるのかもしれないが、それは彼らの「完熟」の味ではない。むしろ、今の彼らは「完熟」の状態に比べると、まだまだ渋い。……そう感じさせるほどに、現時点のオリエンタルラジオは成長の余地を見せている。

本作は、オリエンタルラジオが行った漫才全国ライブツアー『才』の東京ファイナルの様子を完全収録した作品だ。約80分の間、ぶっ続けで漫才をするというストロングスタイルのライブで、様々なネタが次から次へと繰り出されている。それはまさに青二才の咆哮”。『十』で出来上がった一つの完成体を解体し、新たなるステップに踏み出さんとしている若者たちの熱意が伝わってくるような、そんな作品に仕上がっていた。

ネタの出来に関しては申し分無し。中田のブラックな要素を盛り込んだ『患者』、あらゆる犯罪者をヒーローに仕立て上げた『犯罪者マン』、中田の奇怪な動きを堪能できる『校則違反』、中田が藤森に無茶ぶりを続ける『卒業証書授与』など、一つ一つを取り出して、じっくりと世界観を広げれば、更に面白味が増すのではないかと思えるようなネタがそこらじゅうに散りばめられていて、彼らの将来性を改めて感じた。問題は、それらのネタを如何に味付けしていくかなのだが……彼らのことだから、きっと良い作品を仕上げてくれるに違いない。

ただ本作には、一つだけ不満があった。それは何かというと、ネタの本数だ。今回のライブは80分間ぶっ続けという名目になっているが、その内容は、あくまでもショート漫才を幾つも繋げた『百式』方式になっている。それは別に良い。問題なのは、あくまでもネタの本数だ。

今回のライブにおいて、オリエンタルラジオはなんと計二十三本(チャプターで確認可)のショート漫才を披露している2丁拳銃の100分間漫才『百式』で披露される漫才が十六本程度だということを考慮すると、これは明らかに詰め込みすぎだ。おまけに一本一本のネタが濃厚なので、観ているほうがとにかく疲れる。演者としても、もっとネタを引き伸ばしたほうが良かった気がするのだが……こういう無茶苦茶な構成も、彼らが「未熟」だということの証明に思えなくもないが。この辺りは今後の改善点としてもらいたいところ。

これから先、オリエンタルラジオは更に「完熟」へと近づいていくだろう。それまでに、彼らは様々なものを失い、そして様々なものを得ることだろう。そんな彼らが辿り着く「完熟」とは、一体どのような場所なのか。それを是非、見届けてみたいと思う僕なのである。でも、今はとにかく「未熟」。特に漫才師としての技術はまだまだ。じっくりと熟していってもらいたいものである。ああ、楽しみだ。

余談。個人的には『万引き』のあたりから、ちょっとダレてしまったような気がした。それまでに動き重視のネタが多かったからかな。この後の『引っ越し屋』『美容室』『ファッション誌の取材』の流れも、ちょっと退屈だった。いや、ちゃんと面白いんだけど……うーん。インパクト不足なのかもなあ、ちょっと。


・本編(78分)

「オープニング」「夫婦ゲンカ」「力士」「ことわざ」「セレブ」「ヒルズ族」「時代劇」「ダイエット1」「ダイエット2」「患者」「ブログ炎上・謝罪会見」「武蔵」「ヒーロー」「犯罪者マン」「校則違反」「万引き」「卒業証書授与」「引っ越し屋」「美容室」「ファッション誌の取材」「クレーム」「交通事故」「お見舞い」

・特典映像(32分)

「ツアー密着ドキュメント」