菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『5ミニッツ・パフォーマンス 関根勤カマキリ伝説 クドい!』

5ミニッツ・パフォーマンス 関根勤カマキリ伝説 クドい!5ミニッツ・パフォーマンス 関根勤カマキリ伝説 クドい!
(2008/04/25)
関根勤

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 皆さんは、関根勤という人物について、どのような印象をお持ちですか? テレビでの姿だけを知っている人なら、おそらく関根さんに対して「ちょっと変なところがある気の良いオジサン」というイメージを持っているのではないでしょうか。テレビでの関根さんは、モノマネや妄想ネタをちょくちょく披露するだけの、ゲラなオジサンに徹することが多いですから。

 思えば、テレビにおける関根さんは“善人”というイメージが、非常に強いです。1974年デビュー、明石家さんまビートたけしよりも早くからテレビに出演しているにもかかわらず、氏が芸人として批判されることが殆ど無いことからも、その善人ぶりが伝わりますね。自己主張はしないけど、存在感は滲み出ている。まさに「テレビ芸人」と呼ぶに相応しい存在。それが、関根さんという芸人なんですね。

 ただ、それ故に関根勤という芸人は、他の芸人に比べて軽率に扱われている感も否めません。どんな芸能人とも絡めるほどの柔軟性と、どんなバラエティ番組においてもそれなりに結果を残すほどの手腕を兼ね備えている人物にも関わらず、関根さんは一流と呼ばれている芸人と比較して、明らかに過小評価されています。2ちゃんねるで“関根勤”を検索すると、「糞つまんない」「なんでいるの?」というタイトルの板が出てくることからも、その程が伺えます(しかも、どっちの板も過去ログに行っちゃってるし)。

 今作は、そんな関根さんの根っこの部分を取り出して調理した、五分間のコントを放送するCS番組関根勤5ミニッツ・パフォーマンス』を収録したDVD作品です。この作品を観れば、関根さんの真の姿を見ることが出来る……のかもしれません。

 このDVDには、テレビでの“善人”な関根さんの姿を、殆ど見ることが出来ません。ここにいるのは、一人のお笑い芸人としての、あと、一人の変態としての関根勤だけです。それ故に、これまで関根さんに対して朗らかなイメージを持った人が今作を観賞すると、イメージがブッ壊される可能性があります。ひょっとしたら、大嫌いになるかもしれません。カマキリ伝説の再来だ!(当時の関根さんを知っている人は、今のオモテ関根でも苦手な人が少なくないらしい)

 例えば、ニュース番組のコントがあります。キャスター役に舞台女優の今井久美子を配置し、関根さんは解説者を演じています。ゆとり教育の話を振る今井さんに対し、関根さんは突然「もう見せパンには騙されねーぞ!」と怒鳴ります。そして、続けざまに「ゆとりなんて言ってっから、女どもがローライズ穿き始めたんだよ!」と自己理論を展開。そして「見せる専門のだったら良いのか! じゃあ、オッパイも見せオッパイっていうのがあって、見せる専門のオッパイがあったら見せてもらいたいね!」という結論に至ります。……今井さんと共演しているコントは、ほぼ全てがこういう感じになっています。

 ただ、ちゃんと見てみると、ウラ関根さんも決して間違ったことは言っていないんですよね。言っていることは過激なんですけど、その理屈の元はちゃんとした筋が通っているんですよね。だからなのか、どんなに関根さんが激高しても、決して関根さんのキャラクターは狂人といえるところまで振り切れません。そういう意味では、今作はコントというカタチで関根さんの本音を吐き出している作品だと言えるのかもしれません。

 一方、飯尾和樹(ずん)との共演コントでは、芸能界トーク・マニアックモノマネのオンパレードでした。そういう意味では、まだオモテの関根さん寄りの内容の様な気がしますが、ここで披露されているモノマネは、おそらく地上波で放送することは出来ません。マニアック過ぎて。特に飯尾さんのモノマネは絶妙です。関根さんと堂々と渡り合えるほどのマニアックぶりには、なかなか感動させられます。うーん、凄い。

 本作は、オモテ関根さんが、たまーにテレビで披露しているマニアックなモノマネや妄想に、少しでも興味があるなら、観賞して支障の無い作品集だったように思います。テレビでの優しい関根さんのイメージを崩したくないのなら……観なくても良いと思いますよ。はい。


・本編(62分)

『ニュースショー#1』『ママとホステス#1』『不動産店#1』『ママとホステス#2』『ニュースショー#2』『おバカな兄弟#1』『ニュースショー#3』『不動産店#2』『おバカな兄弟#2』『ニュースショー#4』

・特典映像(24分)

カンコンキンシアター マル秘裏話』