菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『$10 LIVE ~ベストコントヒッツ!?~』

$10 LIVE~ベストコントヒッツ!?$10 LIVE~ベストコントヒッツ!?
(2008/09/10)
$10

商品詳細を見る

面白いけれど、なんか地味。そういう第一印象を与える芸人さんは、往々にして全国区の人気を獲得することは出来ません。その芸人さんならではの味、スタイル、インパクトが無ければ、彼らは「そこそこ面白いけれど地味な芸人」という印象のまま、他の芸人たちとともに埋没していくだけです。ずぶずぶ。

僕にとって、$10というコンビは、まさにそういう地味なイメージの強いコンビでした。着実に笑いを取ることは出来るけれど、胸倉をグッと掴むほどの引き込まれる芸ではない。だから、後に彼らが「「爆笑オンエアバトル」初挑戦でオーバー500を記録した」という話を聞いたときには、かなり意外に感じました。当時、初挑戦でオーバー500を記録していたコンビたち(インパルス、パンクブーブー等)に比べて、そこまで芸の強みが感じられなかったので。そして彼らは、そのままこれといった強烈な印象を残すことなく、全国区のテレビから消えていきました。

ところが今年、何の前触れもなく$10がベストコントDVDを発売することが決定しました。どうして、このタイミングなのかはよく分かりませんが、ひょっとしたら「キングオブコント2008」での活躍を見越しての発売だったのかもしれません。……と思っていたのですが、どうも今年でコンビ結成15年目になるのだそうです。ああ、なるほど。ちなみに$10は今年「$10 LIVE ~マンザイ・ヒッツ!?~」というライブも行っています。ひょっとしたら今年は$10の年となるのかもしれません。地味に。

 

そんなわけで、本当に久しぶりに$10のコントを拝見しましたが……相変わらず、出来が安定していますね。オンエアバトルでも披露された『息子ができました』『殺人現場』『すいま すいません(特典映像)』は言うまでもなく面白かったのですが、それ以外のコントもしっかりとした出来で。“ベストの中のベスト版”と銘打っているだけのことはありました。

特に『殺人現場』は、現場に引かれたロープを巧みに利用した大喜利色の強いコントで、オチに至るまでの美しい流れは、ちょっとグッとくるものがありました(ちなみに、$10が初挑戦でオーバー500を記録したコントが、この『殺人現場』なんだそうです。なるほど)。あと、個人的には『ミナミの鬼』が下らなくて好きでした。レンタルビデオのくだりは知っていたけれど、そこから更に発展するとは……。

特典映像には、彼らの『漫才』を収録。「必殺仕事人」をテーマにした、五分弱の漫才なんですが……これが凄い。発想自体に新しいものはないんだけれど、テンポの良さがハンパじゃない。以前に観たときの何倍も、漫才師としての技術が上がっていました。もちろん、収録用にベストなネタを持ってきたんだろうけど……それでも、これは凄かった。

「そこそこ面白くて地味な芸人」に見られる、もう一つの傾向として「地味なりに技術を向上させる」というものがあります。今では全国区の番組で見られる機会がすっかり無くなってしまった$10ですが、その間、漫才師としての技術を着実に上げていたようです。素晴らしい!


・本編(74分)

『息子ができました』『だれやる?』『隣人』『ミナミの鬼』『白川流』『殺人現場』『ドクターサトーによろしく』

・特典映像(18分)

『すいま すいません』『大祐工務店』『漫才』