菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『関根勤の妄想力 西へ』

関根勤の妄想力 西へ関根勤の妄想力 西へ
(2008/10/15)
関根勤

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「事実は小説よりも奇なり」という言葉があります。まあ、そのまんまの意味の言葉なんですが。これってどうなんでしょうか。なんかエラソーなことを言っている感じがしますけど、そんなこと言っておきながら、実際は……ねえ。そんなでもないでしょ。どんなに、予想だりしなかった出来事が起きたって、それを小説よりも奇怪だというのは、やっぱり無理があると思います。

 人間が脳味噌の中で想像できることは、全て実現することが出来るってなことを言う人もいます。お前、じゃあSF小説に出てくるような宇宙人とか、ファンタジー小説に出てくるようなフェアリーが、あなたの前に現れましたか、と。ンなこたァないんですよ。結局、人間が脳味噌の中で想像できることは、現実よりも果てしなく自由なわけですよ。……って、なんだか無粋なことを語っておりますが。自分でも分かって書いてるんだから、触れるなァ。

 それにしても、出ちゃったね。いや、何が出ちゃったって、『関根勤の妄想力 西へ』に決まってるじゃないの、何言ってんのよ。まったく。そうやってボサボサしているから、こんなDVDの発売を許しちゃうんだ。一枚で良いだろ! なんで第二弾が! ……まァ、出ちゃったモンは仕方ないんだけどね。

 第一弾『関根勤の妄想力 東へ』を知らない人のために説明すると、この一連のシリーズは、関根勤が頭ン中で妄想していることを、関根自身に語らせつつ、背景に妄想の内容に沿った映像(CG作品)をブルーバックで流すという……うん、つまり関根勤という人の妄想を映像化するという、それだけの作品シリーズなんだね。それだけなのに、面白いンだよなあ。

 人の脳味噌ン中は自由だって先に書いたけど、やっぱりそこにも限界がある。想像の限界。やっぱりね、自分で学習・経験していないことを元に想像するっていうのは、難しいですよ。うーん。つまり、こういう想像の限界を超えた現実が目前に現れたとき、それを「事実は小説よりも奇なり」というんだな。

 しかしながら、関根勤の妄想は留まるところを知らない。前作も相当留まってなかったけれど、今回は更に留まらない。なにせ、オープニングの妄想が「もしも生まれ変わったら、優香の赤ちゃんになりたい」だ。かなりキテいる。その妄想の内容を、ちょっとだけ引用してみよう。

「まず、へその緒で繋がってるんですよ、優香ちゃんと。優香ちゃんの血が流れてくるんですよ。優香ちゃんが食べて、租借して……そして、この子のために、分かんないですけど、レバーを嫌いかもしれない、でも、『この子のために、私、我慢してレバー食べる』って言った栄養が、へその緒を通ってくるんですよ」

 優香の赤ん坊になるという妄想自体は、それほど意外性のあるものではない。世間には赤ちゃんプレイなんてのもあるくらいだし。でも、関根はまず胎児の段階から妄想する。へその緒で繋がってるところを妄想し、そのへその緒を通って栄養が来ることを妄想し、そこから更に、優香の食事内容まで妄想する。

 よく、ボケた老人があまりにもすっ飛んだ言動を繰り返して、周囲の人間をドン引きさせたりしているが、関根の妄想はそれに似ている。あまりにも変化球過ぎて、こちらの想像の範疇を遥かに超えてくる感。上の赤ちゃん妄想なんか、まさにその典型。ただ、関根はそんな自分を客観視して出来ているから、ちゃんと笑える話にしてくれるし、もちろん、観客も引くことはない(たまに暴走しちゃって、引かせてしまうこともあるらしいけど)。

 そのノリで、妄想はどんどん続く。「生まれ変わったら、イタリア人のサッカー選手になってモテまくりたい」だの、「遺伝子を組み替えて、自分の身体に動物の肉体をつけてみたい」だの、「焼肉の肉だったら、寺門ジモンに焼かれたい」だの……なんなんだよ! もう分からねぇよ! 肉になって、どうするんだよ!

 テレビでは、近所のオヤジレベルの近さを感じさせている関根が、水平線の向こうほどに遠くの存在として感じさせられる今作。普段の、タレントとしての関根しか知らない人にこそ、見てもらいたい作品だ。……たぶん、賛否両論だと思うけど(笑)

  それにしても、気になるのはそのタイトル。第一弾が『関根勤の妄想力 東へ』で、第二弾が『関根勤の妄想力 西へ』……となると、ひょっとしたら、あの二枚はシリーズが発売される可能性があるということだろうか。うーん。勝てる気がしない(何に?)。


・本編(81分)

「本妄想」

『生まれ変わるなら~優香ちゃんの赤ちゃん』『生まれ変わるなら~イタリアのBG』『肉体改造』『理想の死に方』『靴だったら』『焼肉の肉だったら』『日本格闘技大国計画』

「即妄想」

『毛根』『きな粉』『鉄』『ツーシーター』『土踏まず』『品川駅』『迷惑メール』『ひげ』『ポケットティッシュ』『セコンド』『四捨五入』『きゅうり』『飛脚』『冬眠』『マンホール』『写真判定』『リセットボタン』『門番』『オオサンショウウオ』『サービスエリア』『絶対音感』『ロングブーツ』『無重力空間』

「顔妄想」

・特典妄想(8分)

「妄想ビジュアル ご自由モード」

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