菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『第七回東京03単独ライブ スモール』

第7回東京03単独ライブ「スモール」第7回東京03単独ライブ「スモール」
(2008/11/12)
東京03

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東京03のコントはパターン化している。日常に起こりうるちょっとした事件が発生し、本来ならば自然に沈静化するところを大きく盛り上がり、しかしそれなりに落ち着いたところへと着地する。それ以外の流れを持ったコントもあるにはあるが、彼らの代表的なコントは往々にしてそういう流れを持っている。

それなのに、東京03のコントは決してベタ化しない。だんだんと揉め事が起きそうな雰囲気になってきても、ベタな笑い特有の「来るぞ来るぞ」からの「来た!」感が、彼らのコントには無い。何故か。

その理由は、東京03のコントは展開がパターン化している一方で、ボケ・ツッコミの質やコントのシチュエーションが多種多様に富んでいるため、例え同じ展開であったとしても、まったく違うコントになってしまっているからだ。トリオの結成から五年しか経過していない彼らだが、それまでに鍛えてきたコント師としての手腕が、しっかりと振るわれているということだろう。此度に発表された東京03の単独ライブDVD『スモール』は、そんな、コントのシチュエーションに富んだ作品だった。

例えば「卒業生」というコントがある。若い教師の飯塚と中年教師の角田(金八をイメージ)が昔の生徒の話をしているところに、かつて生徒だったという豊本がやってくるのだが、その担任だった角田は、豊本のことをまったく思い出せない。その後もしばらく思い出そうとする角田だったが、どうしても思い出せず、遂に逆ギレし始める。

この理不尽な展開は、第六回単独ライブ『無駄に哀愁のある背中』で披露された「陰口」(角田と豊本が上司である飯塚の悪口を言っているところに当の飯塚が現れるが、角田は開き直るし豊本はキレるしでてんてこ舞い……というコント)に似ているが、コントとしてはまったく違った作品として独立している。

それ以外のコントも秀作揃い。角田が紹介してくれた女性の突然の発言で事態が急変する「角田の紹介」。角田が自慢話をしている最中に、豊本がもっと凄い自慢話を持ってきてしまう「火曜日の朝」。仕事場の先輩である角田が新人の豊本に偉そうな態度を取るが、ある事実が発覚することでとんでもない空気になってしまう「儀式」。どれもこれも、コント的な味付けがなされているものの、決して非日常になりすぎない笑いが作られている。

また、過去の公演では常にイマイチに感じていたライブの最後を飾るロングコントも、今回の「義兄弟」は良い出来だった。慌てふためく角田、理不尽な言動の飯塚、常識があるのかないのか分からない豊本、三者三様の味がしっかりと染み込んだコントに仕上がっていたと思う。

コント以外の部分も秀逸。角田がその無駄な歌唱力を駆使している主題歌「Mr.SMALL LIFE」・エンディングテーマ「スモールラブ~全ての人々に小さな愛を~」(多分某超大物バンドのパロディ)の歌詞の矮小さ、幕間映像「豊本いるよ」「布教活動」のナンセンスさは、素晴らしい。DVD自体の音質も良くなってた。

東京03史上最高の作品。是非、吟味していただきたい。


・本編(95分)

「チーム」「主題歌:Mr.SMALL LIFE」「営業スタイル」「卒業生」「幕間:豊本いるよ」「角田の紹介」「火曜日の朝」「幕間:布教活動」「儀式」「義兄弟」「エンディングテーマ:スモールラブ~全ての人々に小さな愛を~」

・特典

特典映像「儀式 ~another version~」(6分)

「三人による副音声」