菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『トータルテンボス漫才ベストライブ「しのびねぇな。かまわんよ。」』

漫才ベストライブ「しのびねぇな。かまわんよ。」漫才ベストライブ「しのびねぇな。かまわんよ。」
(2008/11/12)
トータルテンボス

商品詳細を見る

M-1グランプリ2007において、トータルテンボスは優勝候補の一角とされていた。笑い飯・千鳥・POISON GIRL BANDといった常連組や、ハリセンボンザブングル・ダイアンといった新参組と比較して、トータルテンボスの漫才は、その安定感と完成度において圧倒的に秀でていると思われたからだ。事実、彼らは最終決戦に進出。M-1グランプリ2001以来の決勝進出となったキングコングと、事実上の一騎打ちになると思われていた。サンドウィッチマンという、想定外のダークホースが現れるまでは。

サンドウィッチマンの漫才は、笑いの引きの強さという意味で圧倒的だった。笑い飯~千鳥までの淀んだ空気を鮮やかに変えたトータルテンボスが作り出した空気を、彼らが更に塗り替えたのだ。MCの今田耕司島田紳助オール巨人などの審査員連中が後押ししたことも手伝って、サンドウィッチマンは見事に優勝を果たし、トータルテンボスは二位に甘んじることとなった。

この時、トータルテンボスの二人が披露した漫才は、どちらも先に発せられたボケが、後になって再び畳み掛けの場面で登場するタイプのネタだ。こういう漫才は、先のボケがハマればハマるほど勢いを増す。予選で披露された「ホテル」は、その成功例だ。一方、最終決戦で披露された「旅行代理店」は、捻りすぎて失敗した例と言えるだろう。しかし、そのどちらの漫才も、サンドウィッチマンの点数を上回ることはなかった。

そもそも漫才というスタイルは、基本的に「その場で繰り広げられる会話」であるということが前提になっている。もちろん、それはフィクションなのだが、その場でのアドリブ感……“即興性”は漫才のひとつの醍醐味であり、また、M-1グランプリで求められている重要な審査基準の一つでもある。トータルテンボスの漫才は緻密に構成されているが故に、その即効性に欠けていた。このことが、トータルテンボスサンドウィッチマンに敗退した直接の原因ではないだろうが、その要因の一つではあると言えるだろう。

……しかし、だからといって本作が凡作かというと、そういうことはなかった。完成度の高い漫才は、その分ブレが少ないため、ネタを映像として保存するDVDに向いていたのかもしれない。ただ、代表作といえるネタをほぼ網羅してしまったために、彼らはテレビなどでこれらのネタをし辛くなってしまったのではないかと思うのだが。大丈夫なんだろうか。

幕間映像には、サディスト大村による、藤田をコキ下ろす映像の数々が披露されている。壊れたイスに座らせて尻餅をつかせたり、筆箱の中の消しゴムをカブトムシの幼虫にしてみたり、藤田が飼っているネコを大型犬に置き換えたり。なかには、ただ池や河に藤田を突き落とすだけの映像もあったりして……なかなかに過激だった。この大村のサディスティックな一面が、もうちょっと漫才に活かされても良いんじゃないかと思ったりもしたのだけれど。漫才では、あえて控えめにしているのだろうか。

最後に余談。本作には、トータルテンボスの初期の代表作である「トラブる」ネタと、かつて彼らが漫才後に必ずやっていた「今日のネタのハイライト」が収録されていない。前者はM-1グランプリ2004の公式DVDでも音声がカットされていなかったので仕方が無い気がするが、後者は収録しても良かったのではないか。堂々と“漫才ベストライブ”と銘打っているで、久しぶりにあのセリフを聞くことが出来るのかと楽しみにしていたのだが……いや、残念。


・本編(115分)

「旅行代理店」「ラーメン屋」「幕間:今日のいたずら ~壊れイス~」「服屋」「幕間:今日のいたずら ~焼酎~」「遊園地」「幕間:とりあえず落とすシリーズ」「スイミング」「幕間:今日のいたずら ~幼虫~」「電機屋」「幕間:今日のいたずら ~ネコ~」「不登校」「幕間:挑戦」「中古車」「幕間:今日のいたずら ~ローション~」「ホテル」「幕間:今日のいたずら ~携帯電話~」「スピードアップ」「幕間:藤田憲右 寝起きドッキリ!!「起きたらセカンド」」「プロポーズ」

・特典映像(36分)

「いらねぇ通販番組」

トータルテンボスの「限界に挑戦!」」

「今日のいたずら(特別編)」