菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『狩野英孝 ファーストライブ Ciel』

狩野英孝 ファーストライブ Ciel [DVD]狩野英孝 ファーストライブ Ciel [DVD]
(2008/11/26)
狩野英孝

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芸人の単独ライブというのは、決して単なるネタ見せの場ではない。そこは芸人の独壇場であり、バラエティ番組や通常のライブでは見せないような顔を芸人が見せてくれる場だ。だから、単独ライブはただ面白いだけで終わるものであってはいけない。そこへ更に、プラスアルファとなる意外性が要求されるのだ。

その意味で、今回の狩野英孝ファーストライブ『Ciel』は、最悪の出来であったと言えるだろう。もちろん、今まさにバラエティという大海を存分に泳ぎ回っている(泳がされている?)彼なので、そのコントも波に乗りまくっている。彼特有のナルシストキャラぶりをこれでもかと発揮しており、時にウザく、時にコミカルなコント世界を提示してくれている。

ただ、それは全て想定範囲内なのだ。狩野英孝といえば、こうこうこういうスタイルの笑いを武器にしているので、こういう笑いを持ってくるのだろうという、観客の予想をまったく裏切らない。ボケが飛び込んでくるタイミングも、どんどん周りから浮いてくる展開も、残念な感じに着地するオチも、全てが同じ。これでは、如何に一つ一つのフレーズを研ぎ澄ましたとしても、やがて飽きが来てしまう。

もちろん、ナルシストキャラは狩野の唯一で最大の武器であり、それを前面に押し出した単独ライブになるのは、当然のことではあるのだが。とはいえ、自身にとって最初の単独ライブにも関わらず、ここまで保守的に、冒険することのないライブを一発目からやってしまっているという、その徹底した防御姿勢は、決して褒められたものではない。

それにしても、ここまで自身のキャラクターをブレさせない内容の単独ライブも珍しい。コントはきっちりと狩野英孝の一人コントだし、幕間のイジられっぱなしな映像は完全にバラエティでの狩野をそのまま再現している。ある意味、現在のテレビバラエティにおける狩野の扱われ方を、そのまま映像化しているような感じだ。……って、それで良いのか?

いわゆる狩野英孝のネタを見たいという人には、良い作品といえるのかもしれない。少なくとも、以前に発売された『狩野英孝の生まれつきイケメンです』よりは、ずっと良い出来だったと思う。観客もいるし。でも、この作品からは、狩野のこれからがまったく見えてこなかった。余計なお世話だとは思うが、不安である。


・本編(52分)

『オープニング』『待ち合わせ』『プロデューサー』『映像コント1』『山』『空』『ビックリ人間』『映像コント2』『SHOP店員』『木ノ下動物園』『映像コント3』『スーパー』『ティーチャー』『映像コント4』

・特典映像(23分)

『「Angel」PVフルバージョン』

『「Angel」PVカラオケバージョン』

『狩野大陸(密着ドキュメント)』