菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ギガンティック』(さくらんぼブービー)

単独ライブ 「ギガンティック」 [DVD]単独ライブ 「ギガンティック」 [DVD]
(2008/12/24)
さくらんぼブービー

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海パン一丁で何もかもを投げ出してしまう一言ネタが人気の小島よしお。真っ白なパジャマ姿で歪んだ人間模様を描く鳥居みゆき。世間一般で、サンミュージック所属の狂気的な芸人さんといえば、この二人が二強であるように思われているかもしれません。しかし、この二人を凌ぐほどに狂気的な笑いを生み出しているコンビが、サンミュージックという事務所に所属していることを、皆さんは御存知でしょうか。

彼らの名前は、さくらんぼブービー。様々なスタイルのショートコントが生み出されていた、いわばショートコント黎明期とも言える時期に、果てしなくエネルギッシュでマッドな笑いを生み出していた、このコンビ。お笑いブームの波に乗ることは出来ませんでしたが、その異常とも言えるほどに独創的なスタイルは、テレビ番組に殆ど出演しなくなった今でも、カルト的な人気を得ています。

師走のサンミュージック祭第五幕、さくらんぼブービー単独ライブ『ギガンティック』。彼らの本分であるナンセンスで過激なショートコントが、舞台上で、または映像として、繰り広げられています。なお、特典映像には2007年に行われた単独ライブ『キャロリ~ナ』の様子が収録。一粒で二度美味しい、とはまさにこのこと。

再生すると、いきなり奇妙な映像が流れ始めます。早朝を思わせる青白さで包まれた、人気の無い街の道路で、びったんびったんと音を立てて跳ねている、一匹の魚。それはまるで、町田康文学の世界。そこへ、能面と般若面をそれぞれ顔につけたさくらんぼブービーが登場。いよいよ町田康です。

そんな奇妙なVTRの後で、ライブ映像が始まります。元来、ショートコントを本分としている彼らですが、今回のDVDはなんと、全編ショートコントです。江戸むらさきの単独DVDみたいに、シチュエーションコントなんか全く入れず、ただただショートコントの乱打乱打。この粗雑感が、いかにも彼ららしいですね。果てしなく混沌としたショートコント世界は、どれも独創的かつ破壊的です。渋谷が乱れているから、渋谷を食い尽くす……って、どういうコントだ(『渋谷』)。

本編後半からは、VTRショートコントが続きます。閉ボタンを押しても扉が閉じない『エレベーター』、ひたすら恐怖におののき続ける『バッティングセンター』、ティッシュじゃないものが配られる『ティッシュ配り』、サイコロで全ての行動が決められてしまう『寝るメシゲーム風呂トイレ木村』、なんだかとっても情けない『エリザベスカーラー』など、狂気でバカなショート映像乱れ打ち。たまらんものがありますね。なんとなく、今年2月に発売された『野爆 DVD in DVD』(野性爆弾)のことを思い出しました。あれもライブ映像とVTRをくっつけた構成になっていましたね、確か。

爆笑オンエアバトル」「笑いの金メダル」などの番組で、さくらんぼブービーに対してなにかしらかのシンパシーを覚えた人なら、まず楽しめる内容になっているのではないでしょうか。少なくとも、前作『さくらんぼディスコ』(今となっては、なんだかPerfumeの曲を髣髴とさせるタイトルですね)よりは、良い出来だったのではないかと思います。九年もよく続けたもんだー。


・本編(約62分)

ライブ:『トンボ』『スーパーボール』『キャッチホン』『達人対達人』『髪型』『暴走族』『友だち』『イス取りゲーム』『散歩』『地雷』『ビリヤード』など全二十本

映像:「エレベーター」「バッティングセンター」「ティッシュ配り」「目覚まし」「鍛冶くんどこだ?」「寝るメシゲーム風呂トイレ木村」「アメリカンドッグ」「打ち合わせ」「ブラックジャック」など全二十一本

・特典映像(23分)

『キャロリ~ナ』で披露されたライブ・映像混合のショートコント全十六本を収録