菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

年始は和風に『B.M.W 江戸むらさきショート・コント集』

江戸むらさき B.M.W~BEST MEETS WORST~ [DVD]

江戸むらさき B.M.W~BEST MEETS WORST~ [DVD]

皆様、明けましておめでとうございます。今年も様々なお笑いDVDを、当ブログを御覧になられている皆様に紹介し、お笑い業界の繁栄にちょっとだけ担っていきたいと思います。さて、今年は一月一日に発売される予定だった笑魂シリーズ第三弾*1の感想を書き初めにしようと思っていたのですが、到着が思いっきり遅れているので、書けないのが現状。そのため、店頭でなんとなしに購入した今作が、今年最初のDVDであり、同時に今年の書き初め感想文の対象となったわけです。えー……そんなわけで、2004年発表の『B.M.W 江戸むらさきショート・コント集』を、一つ。
江戸むらさきといえば、とにかくショートコントのイメージが強い。否、ショートコントのイメージしかない。ウィキペディアの記事によると、ある放送作家に「ショートコントをやれ」と言われて以降、ショートコントのみを作り続けていたのだそうだ。そういえば、オンエアバトルの公式本でも「“ショートコントの帝王”と呼ばれるまで、ショートコントをやり続けたい」と語っていたような記憶がある。おそらく、失敗しても他人のせいにしてやろうという考えがあったのではないかと。……いやいや、そんなことはないだろうけど。結果的に、現在のショートコント師の土台を支える立場になっているんだから、その放送作歌には先見の明があったといえるだろう。今では、江戸むらさきほどにオーソドックスなショートコントをやる芸人は、すっかり希少になってしまった。今作は、そんな江戸むらさきにとって初の単独DVDである。江戸むらさきのショートコントが特典映像を含む220本収録されている。
全体を通して観た印象としては、やや忙しないテンポでネタを披露していて、ちょっと二人が緊張しているように感じられた。特にツッコミの野村さんの緊張が凄かったようで、DVD収録の大事なライブでネタを二度も間違えるという失態ぶりに、ちょっと心配になってしまった。そのことが影響したのか、ネタの完成度は『爆笑オンエアバトル 江戸むらさき』(2005年2月発売)に収録されていた過去の映像のほうが圧倒的に高く、初の単独DVDにしては御粗末なものになってしまった感があった。ただ、220本連続で繰り広げられるショートコントはやはり圧巻。新作・ベストネタ・シチュエーションネタ・ワーストネタと種類別に分けるという構成も、客を飽きさせない意図が見られ、好感触。何気に構成が上手いコンビなんだよなあ、江戸前風味で後味スッキリな芸風を、なんだかんだで堪能することが出来た。
ショートコント自体の話もしよう。江戸むらさきのショートコントのことを、僕は「ネタを練習すれば誰にでも出来る」と思っていたのだけれど、意外と彼らのネタには、このコンビでないと成立しないものが多いということを今作を観て感じた。まず、野村さんの声。物凄く特徴的というわけではないけれど、あの声は切れ味の良いツッコミが似合う。観客の気持ちをスパッと次のネタに移らせる、絶妙な音程だ。一方、磯山さんの顔も良い。ブサイクではないし、イケメンでもない。ほどほどに三枚目な顔のため、顔オチのネタでも顔の印象が頭に残りすぎることなく、とはいえ即座に忘れられるほどではなく。そこそこの印象が頭に残るくらいの切れ味が、実に心地良い。以前、ある人が彼らの天丼ネタについて、「江戸むらさきのショートコントはトランスと同じ中毒性を含んでいる」と評していたが、その素材となっている彼ら自体も、また中毒性を含んだ素材を持っているのだと、そう思った。
こうやって改めて見ると、江戸むらさきというコンビはこれまで思っていた以上に良いコンビだったのだなあ、と認識した。しかし、彼らの単独DVDは、この後に発売される『爆笑オンエアバトル 江戸むらさき』以降、一枚も発表されていない。ショートコントという形態上、なかなか収録できるほどの本数を溜められないのだろうが、なんだか残念に思えたりもする。ショートコントのスタイルを正統に伝えている唯一のコンビであろう彼ら。その功績を考えると、もっとスポットライトが当たっても良いと思うのだが。なかなか、機会に恵まれないようで、残念に思う。

・本編(79分)
「NEW 1」「BEST 1」「設定コント 学校」「設定コント 交番」「設定コント M」「WORST」「NEW 2」「BEST 2」
・特典映像(14分)
「ネタ供養」

特典映像に収録されている「ネタ供養」では、あまりにもつまらないネタ・時代に合わなくなってしまったネタが、供養として披露されている。つまらないネタは本当につまらないが、その中にオンエアバトルなどで披露されたネタがあっれていたのに、ちょっと驚いたりもした。個人的に「外国人とコギャル」は好きなネタなんだけれども……時代に合わないといえば、確かに合わない。