菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

あの感動をもう一度『百式2007』

百式2007 [DVD]

百式2007 [DVD]

僕が2丁拳銃のDVDを買い始めたのは、まだ僕が大学一年生として奮闘していた2003年8月のこと。ジャケットに書かれた“100分間ノンストップ漫才”というフレーズに惹かれて購入したのだ。それまでの僕は、漫才というものにそれほどの興味を持ってはいなかったのだけれど、この2丁拳銃の『百式』DVDを見て、漫才の面白さに気付かされた。つまり、この『百式』というシリーズは僕に漫才というスタイルを教えてくれた、僕の人生にとって重要なシリーズなのである。なんだったら、M-1よりも影響は強いかもしれない。そんな『百式』シリーズも、遂に第五弾の発売となった。『百式2007』である。
実は、ここ最近の僕は『百式』というシリーズに不安を抱いていた。昨年、発売された『百式2006』の出来がイマイチだったからだ。これまで外に向いていた2丁拳銃の漫才のベクトルが、内側に向き始めていたように思えたのだ。何処か、閉鎖的。何処となく、ファン相手に甘えている……とまでは言わないにしても、ちょっと気を抜いている。そういう印象を受けたのだ。今回のDVDでも、そういう印象を受けざるを得なかった。オープニングから自身のギャグをネタにした漫才をやったり、もはや定番にしようとしているマネージャーネタの漫才をやったり……いくら“万物の真理に至るまでを笑いに昇華”することを方針としているとはいえ、ちょっと遠慮してもらいたい。
但し、ネタのクオリティ自体は決して低くはなかった。むしろ、過去の『百式』の中でも高いほうだったと思う。「マッチ売りの少女」を「ハマチ売りの少女」にしてしまう『童話漫才』でのセンスや、吉本新喜劇をパロった『動物園漫才』のノリ、小堀の繰り出す下らないギャグにノリツッコミを繰り広げ続ける『海外旅行するなら漫才』でのテンション……どれをとっても、2丁拳銃の漫才キャリアを感じさせられるもので、まだまだ芸人としての底が知れていないなあ、と感心させられた。
……それでも、やはり緊張感がもうちょっと足りない。どうもマネージャー漫才をやり始めた2005年のライブ以降、『百式』の舞台が戦場ではなくホームになってしまっているようだ。まあ、それはそれで良いのかもしれない。ネタのクオリティが下がったわけではないし、漫才師としての手腕が落ちたわけでもない。ただ、そういう空気を彼らが望み、受け入れたということならば、もはや仕方が無いことなのだ。
でも、2丁拳銃には似合わないと思うんだよなあ、そういう雰囲気って。ロック音楽が好きで、ロックな漫才師を気取っていて、CDなんかも出しちゃったりしている2丁拳銃に、そういうホーム的な安らぎは似合わない。むしろ、そういう場所で本気に戦ってこそ、2丁拳銃なんじゃないかと僕は思うのだ。だから、このタイトルである。2丁拳銃よ、あの感動の漫才をもう一度見せてくれ!

・本編漫才(106分)
「オープニング漫才」「名言ライム漫才」「童話漫才」「天気予報士漫才」「お葬式漫才」「働きアリ漫才」「動物園漫才」「海外旅行するなら漫才」「マネージャー漫才」「家具屋漫才」「仙人漫才」「チョコレートパフェ漫才」
・特典映像(23分)
インターネットで2年間配信していた「2丁拳銃の撃ちっぱなし」。その中の『ちょっとコント(ちょっとしたコント)』を完全リメイク収録。

上の概要にも書いたように、今回のDVDには2丁拳銃のコントが収録されている。そういえば、ここ数年2丁拳銃コントライブを発売していない。彼らの漫才同様、コントもそれなりに面白いから、たまには発売してほしいと思うのだけれども……売れないのかなあ。