最強の二流『所さんの世田谷ベースDVD-BOX』

所さんの世田谷ベース [DVD]

若手芸人ブームが全盛期だった2003年〜2005年頃は、いわゆるお笑いのDVDといえばネタものが殆どだった。その時期は、オンエアバトルの公式ビデオ・笑殺者シリーズ、その他様々な芸人の単独ライブ・ベストライブがDVD化された。ところが近年、その状況に変化が見られ始めている。芸人の本質である“ネタを見せる”行為だけではなく、タレントとしての素質である“ロケを行う・コーナーを仕切る”行為を求めるDVDが増えてきた。特に「ゲームセンターCX」を筆頭とした、マニアな人気を誇っているバラエティ番組をDVD化する傾向が強まっている。最近も「むちゃぶり！」「ペケポン」「モヤモヤさまぁ〜ず」などの番組が、DVD化を予定している。その流れの中に、なんとなーく入り込んでしまった芸人……もとい、タレントがいる。デビューから徹底的に無責任なキャラクターを演じ続ける男、所ジョージその人だ。
「所さんの世田谷ベース」は、BSフジで放送されている番組だ。独自のライフスタイルを提唱している趣味人、所ジョージの日常風景を淡々と見せ付けているだけの番組で、毎回、朋友である清水圭と共にダラダラ趣味の話をしたりなんかしちゃったりしている番組である。分かりやすく言うならば、所ジョージがさまぁ〜ずと一緒にやっていた番組「天才！トコロ店」「所萬遊記」での所の趣味人的な面を徹底的に押し出した番組、と言える。
基本的に所ジョージというタレントは、あらゆるバラエティ番組で自由気ままにやっている印象があるが、この番組での所はそれらの番組で見せる以上に自由だ。楽しいときは素直に楽しそうな顔をするし、不機嫌なときにはストレートに不機嫌な顔をする。清水圭が余計なことをやっているときは「何やってんの？」と不快感を露わにしている。たまにテレビウォッチャーが、タレントやアイドルの類いが自身の感情を剥き出しにしているのを見て「プロとしてどうなの？」とコメントしているのを見ることがあるが、そんなことはごく些細なことだと思えるくらい、自由にやっている。
そんな自由な所をフォローするのが、清水圭である。所と違って所帯染みたところがある清水は、自由な所の後始末を木目細かくやってくれる。そんな清水のことを、所は時にバカにし、時に感心し、時に協力的になる。その姿は、まるでドン・キホーテとサンチョパンサの様。
そういう二人がやる番組なのだから、当然のことながら内容も自由である。ある回は所ジョージの自宅にあるモノを紹介するだけで終わり、ある回は車を紹介するだけで終わり……基本的に所家を紹介するだけで終わってしまう。これは地上波では出来ないよなあ……事実、同様のことを所は他番組でもやっていたらしいのだが、その度にディレクターが怒られているとか。ダメだ。
最近のお笑い界は、まるで病んでいるかのように笑いを狙っている。笑えなければダメだ、とにかく笑えるものが必要だ、と。視聴者も同じ病気にかかっている。もっと面白いものがほしい、もっと笑えるものがほしい……と。そんなテレビの状況に、所はさりげに警鐘を鳴らしていると言える。最近、高田純次・ルー大柴・江頭2:50が再評価され始めているけれど、所ジョージこそ現在再評価されるべき……と、一ファンが言ってみる。

・所さんの世田谷ベースDVD-BOX
Vol.1「お気楽生活指南編」（92分＋特典9分）
Vol.2「所印のクルマたち編」（94分＋特典11分）
Vol.3「ほ〜むる〜む編」（84分＋特典14分）

ちなみにこれ、誕生日プレゼントっつって親が買ってくれました。実はそれほど期待していなかったんですけども……いや、面白いですよ。自由奔放な所さんと清水さんのやりとりは純粋に楽しいですし、所さんの日常も大変に興味深い。良いモノ貰ったなあ。