菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『インスタントジョンソン初単独ライブ おつかれちゃ〜ん!!』

おつかれちゃ〜ん!! インスタントジョンソン 初単独ライブ [DVD]

おつかれちゃ〜ん!! インスタントジョンソン 初単独ライブ [DVD]

 先日、かつて僕が所属していた大学の映画サークルが、自主制作映画の上映会を行うというので、ちょっと広島に行ってきた。広島は良い。広島は交通の便がなかなかスムーズだ。特に広島市周辺は、タクシーやバス・JRのみではなく、町中を駆け抜ける市電まである。この様々な移動方法が存在するという自由に、僕は憧れを隠せない。うーん、羨ましい。
 そのことが手伝ってか、僕は広島に行くとついつい余計な買い物をしてしまう。広島にある中古ショップが、どうも僕の心をくすぐって仕方ない。おかげで、今回も様々な買い物をしてしまった。赤塚不二夫の対談本『バカは死んでもバカなのだ』、秋月りす四コマ漫画『ミドリさん』、山中伊知郎による『小説・コント55号』……この、インスタントジョンソンの初単独ライブを収めたインスタントジョンソン初単独ライブ おつかれちゃ〜ん!!』も、中古屋で購入した作品である。近所のレンタルビデオに置いてある作品だったので、購入の予定は無かったのだけれど……つい、980円という価格に釣られて、購入してしまった。
 後になって気付いたが、自分の中で“インスタントジョンソン”というトリオの名前は、すっかり過去のモノになっていた。まあ、『エンタの神様』『笑いの金メダル』などのネタ番組で一気に消費されてしまった彼らなので、仕方が無いのかもしれない。しかし、ここまで彼らがバラエティで見ないようになるとは。
 思えば、トリオ群雄割拠の時代である。シュールともナンセンスとも違う雰囲気を漂わせるロバート、女性を捨てた勝ち組ナンセンストリオ森三中、見た目のインパクトと強烈なキャラクターが印象的な安田大サーカス、くるくると回転する漫才を発案した我が家など……かなりの数のトリオ芸人が噴出している中では、ネタのバランス・トリオとしてのバランス・キャラクターとしてのバランスに安定感のある“バランストリオ”なインスタントジョンソンは、ちょっと芸の個性としては弱いのかもしれない。
 しかしながら、やはり彼らのコントは面白い。文化祭の出店に就職しようとする奇妙な男を描いた『うどん』、のど自慢にオリジナルソングで出場しようとする『スポットライト』、ミュージカル映画を観てきたカップルが喫茶店で暴れまわる『喫茶店なんで…』など、明確なボケとじわっとくるペーソスが味のコントは、子供からお年寄りにまで伝わる分かりやすいもので、実に良い。個人的には『遊びを忘れた大人達』というコントが、たまらなくペーソスに満ちていて良かったなあ。特にゆうぞうのスーツの哀愁がたまらなかった。
 広島でこれでもかと散財した僕は、翌日の新幹線で実家の香川県某市に帰った。乗車時、既に日は頂点を過ぎており、駅を通り過ぎていくたび、世界は夕闇を帯びていった。このDVDが発売された2005年頃、インスタントジョンソンはまさに、この夕闇の様な状態だった。この頃、『エンタ』『笑金』での出演は激減し、“インスタントジョンソン”という名前がどんどん過去のものへとなっていた。
 今、彼らは夜の時代を迎えている。いつかまた、インジョンの世界に再び日が差し込む時が来るのだろうか。そしてその時、彼らはかつての輝きをまた見せてくれるのだろうか。

・本編(76分)
『レフト兄弟』『オープニングVTR』『うどん』『花屋(VTR)』『ヤンキー』『隠し撮り(VTR)』『まんじゅう怖い』『THE 杉山真一』『スポットライト』『春巻き未亡人(VTR)』『遊びを忘れた大人達』『インジョン美術館(VTR)』『喫茶店なんで…』『楽屋』『エンディング・トーク』『スタッフ』
・特典映像(21分)
『みんなのおつかれちゃ〜ん』『本番直前!!へなちょこ三銃士!!』『終わったちゃ〜ん!!』

 それにしても、今の彼らは何をやっているのだろう。テレビでは姿を見せていないが、トリオを解散していないところを見ると、細々とライブ活動を続けているのだろうか。地方民としては窺い知れないところで、なんとも歯がゆい。