菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『特典映像』は傑作か?

芸人として、テレビタレントとして国民的人気を誇る有田哲平くりぃむしちゅー)が、初監督作品『特典映像』を完成させた。〇七年春に撮影開始、〇八年三月二六日にDVD全三巻(上・中・下巻)で世に問われることになった本作は、有田が監督するはずの架空の映画『左曲がりの甲虫』のメイキング映像が「本編」だ。超豪華一○人のお笑い芸人達が、主演俳優や女優、ロケ地候補のイタリア料理屋やカメラマンなど、映画作りに関わる役柄を与えられて登場し、監督・有田と一対一(+α)のトークバトルを繰り広げる。台本? 演出? どこまでがアドリブ? 見れば笑える、だけじゃない。見れば必ず自分自身の「笑い」の観念が更新され、今見たものの素晴らしさを語りたくなる。有田監督、これって何なんですか!?

Quick Japan』(vol.76)にて、有田哲平の『特典映像』が上記の様に紹介されていたので、ついつい興味本位に購入したのですが、どうも……馴染みません。元来、完成されたネタを好んで楽しむ傾向にある人間なので、余計に馴染まなかったのかもしれませんが。それにしても、ここまで持ち上げるほどの作品かなあ、とは思いますね。はい。
 内容については、もう、上記の通りでした。有田哲平監督が『左曲がりの甲虫』という映画を撮影する様子を追いかけた、いわゆる“フェイク・ドキュメンタリー”映像作品。
 出演している芸人達も、確かに超豪華。関東最強の二番手、矢作兼おぎやはぎ)。松竹芸能のケチケチキング、岡田圭右ますだおかだ)。有田哲平の隠れた相方、山崎弘也アンタッチャブル)。お笑い界最強のピアニスト、清水ミチコ。妄想と現実の間を生きる男、劇団ひとりギャグマンガを体現し続ける暴走特急堀内健ネプチューン)。マイウェイネガティブ、大竹一樹さまぁ〜ず)。視野狭窄の天才、秋山竜次(ロバート)。偽インテリズム、上田晋也くりぃむしちゅー)。表裏一体の人、伊集院光現在のバラエティを盛り上げる面々が名を連ねており、また各々が自らの力を発揮していて、なかなかに面白かったです。
 そう。面白かった。必死になってギャラを上げようとする岡田さんのみみっちさ、どうにか映画に出演しようとする山崎さんの強引さ、ひたすら自らの世界に皆を引っ張り込もうとする堀内さんの傍若無人さ……芸人さんたちの持ち味がしっかりと発揮されていて、確かに面白かったんです。
 ただ、これ……有田さんの必要性を感じないんですよね。いや、有田さんが女房役になっているというか、出演者たちの補助としての立場を取っているということは重々承知しているのですが、それでも、あまりにも存在感が無い。そりゃ、演じている芸人さんたちも、相手が有田さんだからこそ実力を存分に発揮しているのかもしれませんが。でも、芸人としての有田さんは、そこにはいない。
 企画としては良かったと思う。買ったことは後悔していないし、次回作が出来たら、また観てみたい。でも、その時は有田さんが上手くトークを引き出している(或いはジャマしている)姿を見たいものですね。