菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『イッセー尾形 一人芝居2006春 クエストホール』

イッセー尾形 一人芝居 2006春 クエストホール [DVD]

イッセー尾形 一人芝居 2006春 クエストホール [DVD]

 イッセー尾形の単独公演。AmazonでDVDを取り扱ってもらえるようになってから、こういう純粋な単独公演がDVDとして一般に発売されるようになって、実に宜しい(これまでは傑作選が年に一度の頻度で発売されていた)。ただ、その為にあまり一般向けじゃないネタも見られるようになって、一鑑賞者としては、やや難儀しなくもない。うーん。なかなか上手くいかないもんだ。
 それにしても、イッセーの演目はいずれも設定が面白い。例えば、個人的に肌が合わない演目だけれど、一本目の『お産婆』なんか、かなり設定がおかしい。ある家に来ている産婆が、ずっと何か(ネコだのイヌだの)にブツクサと話しかけている。なんでも、その家の嫁の子供を取り出すために呼ばれたらしいのだが、そこの祖父が丁度良い(?)タイミングで亡くなってしまい、子供が引っ込んでしまった……ので、ずっと時間を潰し続けているのである。この設定の妙な感じが、なんだか面白い。
 これ以降も、妙な設定の話が続く。どういうわけかスーツ姿で北アルプスに来てしまったサラリーマンのヤケクソな説教姿が絶妙なアルプス、何故か恋人に「なんで俺の日記を読まなかったの!?」と問いかけ続ける若者の講談を見せる『ブログ』(こういう演目を持ってくるあたり、イッセーの視界の広さを思わせるなあ)、好意を持つ相手と温室の中で語り合う『温室』……ちょっとオーソドックスな設定とは違う設定を持ってくるイッセーの世界。この辺りは、もうちょっと評価されてほしい。
 ただ個人的には、今回の公演では設定に凝ったものよりも、かなりオーソドックスな設定の演目のほうが好きだったかな。「家に帰ってボ〜ッとしなくちゃいけないから、早く帰りたい」という天然系の女性を演じた『IZAKA-YA』とか、頭の悪そうな生徒が旅行先ではっちゃけまわる『修学旅行』とか、その辺が良かった。特に『修学旅行』は、本当にバカな生徒をイッセーが一人で演じているだけという……いやあ。いるよなあ、こういう生徒。
 ……さて。ここまで読んだところで、なんとなく察している人もいるかもしれないが、正直、イッセーさんについては書くことがない。今のイッセーさんって、いわゆるお笑いの方程式からちょっと外れたところを掘り進んでいるというか。単に笑える、とは違う感じになっていて、どうも文章にまとめづらい。もう、笑いという範囲だけでは語れないのかもしれない。むー。

・本編(103分)
『お産婆』『アルプス』『ブログ』『温室』『肉屋』『IZAKA-YA』『修学旅行』『早朝ライブ』