菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『真空報告官大運動会』(シティボーイズ)

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(2006/04/12)
シティボーイズ

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ちょっと前に、シティボーイズについて書いたときに、某所で「アイツは周りにツッコミを入れられないような笑いを評論していて、卑怯だ」みたいな野次が書かれているのを見た。僕がシティボーイズ好きなのは、割と前からブログでも書いていたことだったのに、どうして今更そういう野次を飛ばしてきたのか。当時の僕には、どうにもこうにも理解できなかった。今も理解できていない。たぶん、ヒマだったのだろう。うん。

シティボーイズライブ『真空報告官大運動会』。シティボーイズの三人に、某チャンピオン番組で頻繁にレポーターをやっていた中村有志と、作家だけどタレントとしても活動しているいとうせいこうの二人を加えた、五人による公演だ。中村有志は現在“第四のシティボーイズ”と呼ばれるほどに、シティボーイズの公演には欠かせない存在となっている。一方のいとうせいこうも、過去六回の公演(現在DVDで観賞可能な作品に限定)に客演するという活躍ぶりを見せている。要するに、この五人編成によるライブは、非常に人気があるのだ。本編には同ライブ公演の最終日、渋谷公会堂での様子が収録されている。ちなみに、この前の作品『NOT FOUND』には、追加公演の行われた日比谷野外音楽堂での様子が収録されている。ロックだねぇ。

シティボーイズのライブといえば、とにかく肩に力の入っていない演者たちの緩さと、徹底的にナンセンスな世界観に定評がある。今作もまた然り。分からない人には分からないだろう、感性に訴えかけるギャグの羅列。ハマれば、ハマる。そんな笑いが、これでもかと立て続けに送り出される。……って、なんかベタ褒めしているけれど、これはもう仕方が無い。ラーメンズの師匠的存在である彼らを、ラーメンズ信者の僕が否定するのは、容易なことではないのだ。というか、あえて否定する必要も無いのだけれど。

大竹まこと演じる“エレクトリックソウルマン”を中心に動く三文刑事ドラマを主軸とした今作は、とにかくバカバカしいの一言に尽きる。死体の腐敗臭を誤魔化すために鼻の上にムヒを塗る刑事、いつか来るだろうパレードを待ち続けるあまりに仕事が手につかないサラリーマン、あらゆる出来事に対して妥協し続ける兄弟……そのシチュエーションだけでも、かなりバカバカしいのに、ボケの一つ一つも際立ってバカバカしく、おかしい。大竹が投げた缶コーヒーをいとうが受け取り、アイキャッチの様に「刑事、エレクトリックソウルマン!」と叫ぶ場面なんて、かなり爆笑するんだけれど……これを言葉で説明するのは、ちょっと難しい。感覚に訴えかける笑いなのである。だから、感性が合う人はとことん笑えるし、感性が合わない人はピンとこない。この辺は、そもそもシティボーイズがお笑いではなく舞台出身であることが、少なからず影響している気がする。気がするだけ。

もうイヤになるほど観ている公演だけど、今でもそこそこ笑える。不意を突かれるというか、急に下らないフレーズが出てくるから、ついつい笑っちゃうんだよなあ。激しいダンスをふらつきながら踊った斉木に対して、いとうが「死んじゃえばいいのに!」とぶっちゃけちゃうところは、もう何度観ても笑える。いとうせいこう、好きだ。ボケ役の時もツッコミ役の時も、いい味出してんだよなあ。

そんなわけで、今年最初に観たお笑いライブDVDは『真空報告官大運動会』となった。五人編成によるシティボーイズライブとしては、一つの集大成を迎えている今作。どちらかというと、年末に観るべき公演の様な気がしないでもないが……ま、良いや。ちなみに、この公演で使われているネタの一部は、以前の公演で使われたものを踏襲したものだ。なので、過去の全ての公演を鑑賞してから、今作を観ることをお薦めする。うーん。

というか、マクラの部分が要らなかったか。消さないけど。


・本編(130分)

『オープニングVTR』『刑事エレクトリックソウルマン ~捜査~』『オープニング』『パレード』『妥協兄弟』『大きなダルマ』『オフィス』『プーさん』『リバーシブル・ジャンパーズ』『電球の家』『刑事エレクトリックソウルマン ~赤いスパイ~』『ショートコント』『山男たち』『刑事エレクトリックソウルマン ~我が家~』『長い廊下再び』『エンディング』

※演目タイトルは存在しないので、勝手に命名しています