菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『epochTVsquare』(バナナマン×おぎやはぎ)

バナナマン&おぎやはぎ epoch TV square Vol.1 [DVD]バナナマン&おぎやはぎ epoch TV square Vol.1 [DVD]
(2004/01/21)
おぎやはぎ バナナマン

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バナナマン&おぎやはぎ epoch TV square Vol.2 [DVD]バナナマン&おぎやはぎ epoch TV square Vol.2 [DVD]
(2004/01/21)
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バナナマン&おぎやはぎ epoch TV square Vol.3 [DVD]バナナマン&おぎやはぎ epoch TV square Vol.3 [DVD]
(2004/01/21)
おぎやはぎ バナナマン

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このところ、コントに対する興味が薄れてきている。いやー、困った。ごくフツーの日常を送るだけなら、それほど問題のあることではない。ただ、僕の様に、それなりの年月をかけてお笑いバカをやっている人間にとっては、この展開は非常に良くない。側道からではあるが、お笑いに対して人生を賭けてやろうと思い立って、早数年。とうとう、こういう状態に陥ってしまったのかと、頭を抱えてしまっている始末である。このままでは、真人間まっしぐらじゃないか!(むしろ吉報)

そこで、昔のコントを観ることで、若かりし頃の情熱を呼び起こすという、なんだか中間管理職のサラリーマンが年一ペースでやっていそうなことをすることにした。なんか、疲れたときとかに、新入社員だった頃のアルバムを見返すような感覚、分っかるかなぁ。分っかんねぇかなぁ。なんて、思わず松鶴家師匠が出てきちゃったけれども。そういうことをやってみれば、そのうち熱意を取り戻せるんじゃないかな、という安直な考えが浮かんだのである。うぃうぃ。

そんな理由を捏ね繰り回し、昨日と今日の二日がけで『epochTVsquare』を観返してみた。関東を代表する若手コント職人バナナマンと、マイペースユルユル漫才師おぎやはぎによる、ワンシチュエーションコメディショーだ。もう五年も前に発売された作品(実際の放送は2003年なので六年前)なのだが、その面白さはまったく色あせていない。作・演出を担当しているのは設楽統・オークラ・平松政俊の三人で、収録は観客を入れた上で行われている。既に『笑いの巣』で実績を残していた二組とはいえ、実に良い環境を与えられている。特にバナナマンは、当時まだ全国的な知名度ではなかったのになあ。日本テレビは偉大だ。偉大なので、多少の捏造報道も許しちゃいます(いけません)。

このシリーズが凄いのは、ワンシチュエーションコメディという形式にも関わらず、回ごとにまったく違った色合いのストーリーを作り出しているという点。ひたすらに低レベルな下ネタばかりが繰り広げられるような回(第2話)もあれば、全体的にホラーチックな雰囲気が漂っている回(第7話)もあるし、サスペンスドラマの様な張り詰めた緊張感を見せる回(第9話)もある。それなのに、ちゃんと話が一話ごとに完結しているんだから、凄い。こういう笑いが、もうちょっと世の中に出て行ってくれたらなあ。最近のお笑いはつまらないなんて言う人も、きっと減ると思うんだけどなあ。

しかし、矢作の芸人としてのポテンシャルの高さには、改めて驚かされた。ツッコミ役としての実力については、言わずもがな。面々の下らないボケを、次から次へと捌いていく姿は、まさに職人芸。一方、ボケ役としても実に機能的。詐欺師的な胡散臭さを振りまきながら、出演者をどんどん翻弄していく姿は、実にダメシニカルで面白かった。というか、裏声を出すだけで笑いになる人って、なんか凄いよなあ。

最近ちょっとずつ、コント番組の権威が復古しつつあるようで、実に嬉しい。この勢いで、こういう若手芸人に30分ほど与えてシチュエーションコントをやらせてみるような番組を、ちょこちょこ作ってくれたら良いのになあ。『やっぱり猫が好き』とか、『HR』とかみたいな、役者メインのでも良いけど(ふと思い出したけど『HR』って、確か号泣出てたっけなあ)。今、こういうことをこなせる若手芸人って、いるのかな。探したらいるかもしれないな。当時、バナナマンは結成十年目で、おぎやはぎは結成八年目。同じくらいのコンビに、どっかのテレビ局がやらせてあげてくれねぇかなあ(田上よしえ風に)。

追記。第11話のエンドトークで、日村と矢作がテンションのネタを口ずさんでいた。当時はフツーに聞き流していたけれど、テンションというコンビが田口浩正芋洗坂係長で結成されていたということを知っている今となっては、なんだか過去を懐かしんでいる二人の姿を妙にいとおしく感じてしまう。当時、まさかテンションが日の目を浴びる日が来るとは、思ってもみなかっただろうなあ。