菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『エレ片コントライブ コントの人2』

エレ片コントライブ~コントの人2~ [DVD]エレ片コントライブ~コントの人2~ [DVD]
(2009/02/18)
エレ片

商品詳細を見る

二度目もやっぱり、バカだった。関東屈指のコント職人“エレキコミック”と、アーティスティックでシュールなコントを構築するコント集団ラーメンズの怪人担当“片桐仁”によるバカユニット「エレ片」が行った単独コントライブエレ片コントライブ コントの人2』がDVDとしてリリースされた。第一弾においても、そのバカさを全力で表現していた彼らによる二度目のコントライブ公演は、やはりバカバカしい内容になっていた。

そもそも、お笑いにおける“バカ”とは何なのか。全ての芸人はバカをやっているのではないのか。そんな疑問を感じる人も少なくないのではないかと思われる。ここで明確にしておくが、全ての芸人がやっているのは、バカではなく“ボケ”である。バカとは、ボケの中でもナンセンス性が強く、それていて質の軽いものを示す。かなり練りこまれているのだけれど、その練りこみを観客に感じさせないタイプの笑い。それが、バカだ。

このようなバカを武器としたコントは、元来エレキコミックが持ち味としているもので、「エレ片」はそんなエレキの世界観に片桐がお邪魔するというスタンスで行われている。そりゃ、ラーメンズの全てのコントを書いているのは相方の小林賢太郎なのだから、片桐はそうするしかない。ただ、「エレ片」における二組の方程式は、決して<エレキコミック片桐仁>という単純なものではない。少なくとも前作では、<エレキコミック×片桐仁>という化学反応が成立していたコントが少なくなかった(『リアル湯けむり殺人事件』とか、『パワーベルト』とか)。

ただ、今回の公演では、そんなバカの化学反応が幾らか弱まってしまっていた。というよりも、全体的に<エレキコミック×片桐仁>というコントが少なく、むしろ単純に<エレキコミック片桐仁>という方程式で片付いてしまったコントが多かったように思う。

例えば『自動車教習所』というコントがある。教官のやついが、マジメに人工呼吸の教習を受けようとしない今立に、思い出話を披露するというコントだ。片桐は、その思い出話に登場する女の子を、バカバカしく演じている。つまり、このコントには、エレキコミックと片桐はそれぞれ独立した立場で出演しており、三人が同時に絡み合うことはない。やついがちょっと変わった人物を演じ、片桐と今立がその人物について陰口を叩く『つまんないいやつ』『出山』もまた、同様。三人はきちんと絡み合わない。絡み合っているコントもあるにはあるが、『雑』『ヤレる』はエレキコミックの世界にそのまま片桐が参加しているだけだし、『ABC』は前作における『さくらの薗』と同じ路線の焼き直しコントだ。それでも、一定のクオリティを保っているというのは、彼らのバカコント師としての実力が為せる業だと言えるだろう(褒め言葉ではないなあ、コレは……)。

あらゆる映画のパート2は、パート1を越えられないのが当たり前だとされている。今回の『エレ片コントライブ コントの人2』もまた、前作を越えられなかったパート2ものだと言えるだろう(まあ、エレ片によるライブDVDは、今回で五作品目になるのだが)。せめて、『リアル湯けむり殺人事件』ほどのコントがあれば、もう少し印象も変わったと思うのだが。あと、特典として副音声がついていれば、もうちょっと……次回作には期待させていただきたいたいところ。

特典映像には、エレ片の三人が赤坂駅からTBSラジオ収録スタジオまでの道案内を、べろべろの状態で行うという「赤坂泥酔散歩」が収録されている。道端に落ちているゴムでゆーとぴあをやってみたり、街中でエレキの二人が「ブスしかいねーなー!」と叫んでみたり、片桐が収録中に何度も小便に行ったり、単なる酔っ払いの同行がぐだぐだと繰り広げられている。タチが悪いぜ!


・本編(95分)

「オープニング」『Big Father』『自動車教習所』『雑』『つまんないいやつ』『ヤレる』『出山』『ABC』「エンディング」

・特典映像(12分)

「赤坂泥酔散歩」