菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

シティボーイズミックスPRESENTS『オペレッタ ロータスとピエーレ』

シティボーイズミックス PRESENTS オペレッタ ロータスとピエーレ [DVD]シティボーイズミックス PRESENTS オペレッタ ロータスとピエーレ [DVD]
(2009/03/25)
TUCKER

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大竹まこと、きたろう、斉木しげる。劇団員だった三人によって結成されたコントユニットシティボーイズによるライブ公演が、今年も無事に開催されるようだ。年に一度だけ行われるのが恒例となっているライブではあるが、そろそろ年齢的に厳しくなってきているのではないかと、どうも不安になってしまう。なにせ、メンバーで最も若い斉木しげるでさえ、今年で六十歳を迎えるのだ。不安にもなるというものである。

不安を感じるのは、なにも体力的な部分だけではない。ここ数年、シティボーイズのライブ公演は、少しずつ大人しくなっている。それは単に、メンバーによるドタバタコントが減ってきたという話ではないし、大人としての渋味が増してきたという話でもない。ただ、大人しくなっている。特に先の公演『モーゴの人々』は例年に無いほどに大人しい内容で、今後はこの傾向が強くなっていくのではないかと、少しばかり不安を覚えた。

しかしその不安は、オープニングコントを観て、スッキリと吹き飛んでしまった。オペレッタ用の衣装を身に纏い、一人で舞台に立つきたろう。後の背景から登場する、斉木しげる中村有志。三人でピエーレさんをオペレッタ風に呼ぶ。そこに大竹まことも現れる。四人で歌い始める。するとそこへ、ピエール瀧演じるピエーレさんがボブスレーに乗って登場。そして一言「オペレッタ、終わり!」。意味が無い。ひたすらに無意味で、妙にエネルギッシュな空間。これこそが真骨頂。僕がかつて心底愛した、シティボーイズの無意味さだった。

その後も無意味に、ただひたすらに無意味に、時間は過ぎていく。前衛音楽を披露して批判し合う会。恩人の妻も息子も飼っている猫さえもが初老の親父に見えてしまう男。抑圧から解放された人々による仮面トークショー。“後には何も残さない、何も残らない”というシティボーイズのコント観は、今も変わらず生きていた。

とはいえ、終わりが見えてくるにつれ、少しずつ大人しくなっていったようにも感じた。言うなれば、スタミナ切れ。これもまた、最近のシティボーイズライブにおける傾向の一つだ。昔なら、ライブの終わりまで持続させていたテンションが、途中で明らかに途切れている。最後に披露されたキャラクターショートコントには、ちょっと笑ってしまったが。なんとなく、尻すぼみな展開になってしまった感は否めない。

この2009年で、結成三十周年を迎えることとなるシティボーイズ。特別な年には、何か特別なことを起こすのではないかと勘繰っているのだが、果たしてどうなるか。この際、大人しくなるのは仕方ないと納得するから、どうにかして全体の流れを整えてもらいたいところだが……。この辺りは、演出の細川徹に頑張ってもらうしかないだろう。そういえば、十年ごとに演出家が替わっているシティボーイズのライブ公演。順番で言うと、来年で細川徹は交替ということになるわけだが……こちらもどうなるか。


・本編(約110分)

『ピエーレさん、来る』「オープニング」『軍服の男たち』『前衛音楽の会』『初老の人々』『訓練』「斉木しげるの泣く演技」『騙される男』『仮面トークショー』『オレだっ!!!』

※コントタイトルは存在しないため勝手につけたものです