菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『関根勤の妄想力』東西復習編

関根勤の妄想力 東へ [DVD]関根勤の妄想力 東へ [DVD]
(2008/07/16)
関根 勤

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関根勤の妄想力 西へ [DVD]関根勤の妄想力 西へ [DVD]
(2008/10/15)
関根勤

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宅急便という仕事の苦労を知らないからこそ言うのだが、どうしてこうも宅急便というのは、こちらの都合通りに動いてもらえないのだろうか。この時分には来るだろうと目論んでいた時刻には姿を見せず、こちらが油断して風呂にでも浸かっているという時に限って、電話なりなんなりを寄越したりする。もちろん、こちらから電話なりなんなりをして配達夫と連絡を取り、こちらにとって都合の良い時間を指定すれば万事上手く進んでいくのだろう。が、そういう方法を取るのは、なにやら相手に自論を押し付けているかのような気持ちになるので、個人的にはあまり致したくない。結果、それが自論の押し付けになってしまっていても、だ。

そういう理由で、本日我が家に送り届けられる予定だった『関根勤の妄想力 南へ』の到着を、もう一日ばかり見送ることになった。あの佐川急便が午後七時前に連絡を試みているとは思わず、電話を確認せずに入浴してしまったのが原因である。普段は午後八時だの九時だのに連絡してくるくせに、こういう時に限って、無駄に気を利かそうとする。便利になるなとは言わないが、せめて態度を統一してもらいたいものだ。

とはいえ、到着が延期となってしまったことに関しては、不思議と腹が立っていない。思うに、僕にとっての関根勤という存在は、出来る限りは楽しみたいと思うけれど、必死になって望むほどのものではない、ということなのだろう。一介のお笑い芸人にとっては不服かもしれないが、関根氏に対する態度としては、これが正解の様な気がしないでもない。

そうして空いた時間を有効に使わなくてはと思い、過去の『関根勤の妄想力』を観賞することにした。とはいえ、一時間半の作品を二本連続で観るほどの時間は無いので、提示された固有名詞で即座に妄想する「即妄想」と、エキストラの顔写真を受けて妄想する「顔妄想」は飛ばすことにした。これらの妄想に関しては、テレビバラエティに出演している関根氏がたまに披露するからこそ面白いのだと、個人的には思う。それをパッケージ化したこと自体は、高く評価するが。やはりここは、特定の状況下を深く掘り下げて妄想していく「本妄想」と、とある女性有名人が所持している物になりきって妄想する「'S妄想」の二種のみを、じっくりと観賞するべきだ、という結論に至った。

関根勤の妄想力』とは、関根勤が日常的に行っている“妄想”の数々をコンピューター・グラフィックスを駆使して映像化し、作品として収めたDVDシリーズである。2008年には『関根勤の妄想力 東へ』及び『関根勤の妄想力 西へ』がリリースされ、2009年にも『関根勤の妄想力 南へ』及び『関根勤の妄想力 北へ』がリリースされる予定である。

まずは『東』から観賞する。「人間は動物界で何番目に強いか?」などという、関根氏としてはあまりにもシンプルでオーソドックスな妄想が入っているあたりに、第一弾ならではの保守的な態度が垣間見える。その保守的な中にあって、思わず声を漏らしてしまうほどの衝撃を与える妄想が、『優香ちゃんのブラジャー』である。曲がりなりにも芸能人が、タレントとして活動している女性芸能人が身につけているものになるという妄想を繰り広げているのである。驚くなというほうが無理だというものだ。しかし、その妄想は決してエロティシズムの方向に昇華されることはない。何処かマゾヒスティックな香りを漂わせながらも、あくまで精神的な部分でのみ解釈される妄想なのである。<勝負下着ほど空しいものはない。だって彼氏に外されちゃうんだよ!>という名言にも、思わず唸らされる。「優香ちゃんのブラジャー」もそうだが、今作に収録されている「'S妄想」はいずれもクオリティが高くて、実に宜しい。『西』には収録されなかったが、『南』『北』では是非、復活させてもらいたいものだ。

一方の『西』で繰り広げられる妄想には、不思議と印象に残っているものが少ない。つまらないわけではないのだが、どうも記憶に残っている妄想が少ない。恐らく、『東』における「'S妄想」の様に、誰もが知っている特定の有名人の名称が登場するような妄想が少なく、それ故、ややエンターテイメント性に欠けていることが、僕の記憶に多くの妄想が留まっていない原因なのだろう。面白かったという記憶は、それなりに残っているのだが。そんな数少ない記憶の中で、妙に印象に残っているのが『生まれ変わるなら~イタリアのBG』という妄想である。イタリア人のイケメンサッカー選手になったとしたら、果たしてどんな優雅な人生を過ごし、その優雅さに見合うだけの罰を受けることになるのかを妄想している。これはとにかく、そのオチが持っているインパクトが強烈だ。どのようなオチだったのかは書けないが、なかなかにバカバカしいオチであった。

以上の二作品を踏まえ、明日の『関根勤の妄想力 南へ』に臨むわけだが、果たしてどのような内容になっているのかがふと気になったので、公式サイトの方を覗いて見ると、新しく「どこでもいきなり妄想」というスタイルの妄想が収録されているということだそうだ。果たして、どういった内容になっているのか。気になる。気になるので、妄想することにする。妄想の妄想……気がつくと、僕は砂浜の上に立っていた。立ってない。妄想もしてない。嘘、デタラメである。

最後に、公式サイトにおいて『関根勤の妄想力』紹介文として書かれていた、爆笑問題太田光による関根勤の解説がなかなかにホラーチックで秀逸だったので、ここに書き写して紹介したいと思う。サイエンスフィクションの類いをこよなく愛しているという太田氏ならではの、なんともいえないニュアンスが漂っている。

関根さんは誰からも好かれていて、誰もが気軽に近寄れて、その入り口は大きく開いているのに、それに気を許して入っていくと、行き着く先は、誰も行ったことのないような狭い奇妙な世界で、気がついた時にはどこにも出口が無くて、立ち往生してしまうことになる。そうしてうろたえている我々を見て、いつも関根さんは手を叩いて大笑いしているんだと思う。恐ろしい。

『妄想力』を楽しんでいる僕のことも、何処かで見ているような気がする。……って、しょうけらかよ。