菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

ラーメンズ第6回公演『FLAT』

ラーメンズ第6回公演『FLAT』 [DVD]ラーメンズ第6回公演『FLAT』 [DVD]
(2009/05/08)
ラーメンズ

商品詳細を見る

第十七回公演『Tower』を観賞し、興奮冷めやらぬ土曜日。宅急便で、第六回公演『FLAT』の様子を収録したDVDが届けられた。最新の公演を観た後で、最古(から二番目)の公演映像を観るというのは、なんだかとっても歴史的情緒を感じさせる。この時代があったから、今の時代がある。本来なら、歴史の授業で理解すべきことを、こうしてラーメンズから学んでいるという事態が、なにやら日本教育の脆弱さを表しているように思わなくもない。意図的に話を脱線させてみた。なにやら某朝日新聞のコラムの様である。

再生してみると、本編コントの前に奇妙な映像が流れ始めた。いや、奇妙な映像と言っても、舞台上で行われた、単なるオープニング・セレモニーの様なものなのだが。ただ、そのオープニングの存在を、僕は今作を再生するまで知らなかった。元々のVHS版に収録されていたものなのか、それともDVD用に新しく公開した演出なのか。その実態は分からないが、なんだか面白い映像だった。当時のラーメンズが、舞台でこういう演出をしていたとは。なにやら、得した気分である。

本編に収録されているコントは、全部で十本。面白いと感じる作品もあれば、イマイチに感じる作品もある。良く言えば、溢れ出る発想をまとめきれていない。悪く言えば、思いついたものをそのまま吐き出している。そういう印象を受けた。なんとなく、前回の公演『home』よりも、粗雑で投げやりになっている気もした。あくまでも想像だが、ひょっとしたらこの時期のラーメンズは、今でもフレーズとして使われることの多い“芸術知能犯”というイメージに、飽き飽きしていたのかもしれない。或いは、ライブを中心に活動していくという方針から、アングラ的なコントを意識しすぎていたのかもしれない。

思えば、この公演で披露されているコントには、危なっかしい表現が少なくなかった。例えば、死んでしまったアザラシを解体したり(『海豹』)、精神的な病に掛かっていると思われる男を見捨てたり(『ドーデスという男』)、友人のギターケースの中から粉末状の何かが出てきたり(『お引っ越し』)。元々、ブラックの要素を持ったコントも演じていた彼らではあるが、今作では特にその部分が強調されていた。やはり、アングラ的なコントを目指していたのだろうか。

今作の最後に収録されているのは、名作『プーチンとマーチン』だ。小林と片桐がそれぞれ操っているパペット人形を使って、無軌道で不条理な会話を展開させるという、なんだかしゃべくり漫才を髣髴とさせるスタイルのコントである。ベスト盤『Rahmens 0001 select』に収録されている作品で、後に第十一回公演『CHERRY BLOSSOM FRONT345』にて第二弾『プーチンとマーチン2』も作られている。彼ら自身も気に入っているのだろう。過去に何度も鑑賞した作品だが、それでもやはり面白かった。ただ、『Rahmens 0001 select』に収録されている映像と、少し違った映像が収録されていたのが、ちょっとだけ引っかかった。詳しく書くのは面倒臭いので書かないが、あれにはどのような意図があったのだろう。気になる。

ブラックさとナンセンスさの中で蠢いていた頃のラーメンズ。決して純粋に笑える作品とは言えなかったが、彼らが今に至るまでの過程の中にある公演として見ると、この作品は間違いなく面白い。ラーメンズの歴史を探りたいならば、この作品は必修科目である。ところで、日本の歴史の授業は往々にして大正デモクラシーの辺りで終了してしまうが、あれは日本教育の徹底しない至らなさを現しているのではないだろうか。最後の最後でまた脱線。


・本編(87分)

『初男』『埋蔵金』『海豹』『アレグレット』『ドーデスという男』『新橋駅をご利用の皆さん』

『お引っ越し』『棒』『透明人間』『プーチンとマーチン』