菅家アーカイブ

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『三拍子 in エンタの味方! 爆笑ネタ10連発 』復習編

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(2008/10/29)
三拍子

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某サイトで確認したところによると、三拍子の二人が『爆笑オンエアバトル』で初めてのオンエアを勝ち取ったのは、今からおよそ七年前の2002年のことなのだそうだ。正直、そんなに昔のことだったとは、思わなかった。彼らのオンバトデビュー戦を知っている人間としては、その月日の流れの速さに、ただ驚かされるばかりである。

さて。2002年6月の初オンエアから、2007年度の終りに行われた第10回チャンピオン大会ファイナル(2008年3月)で番組を卒業することになるまでに、およそ30本の漫才を披露してきた三拍子。一応、僕はその全てのネタを観賞してきた筈なのだが、未だに「三拍子ならではの笑い」を理解できていない。これは勿論、僕の識眼の無さによるところも大きいのだが、そもそも彼らの漫才に、目に見えて個性的な要素が見受けられないということを意味しているようにも思う。

しかし彼らが、史上最もシビアなバラエティ番組と自称している『爆笑オンエアバトル』で、30本の漫才を披露し続け、チャンピオン大会でも好成績を残してきたという記録は、彼らが確固たる笑いのスタイルを確立していることを、確かに表している。そんな彼らの笑いのスタイルとは、果たしてどのようなものなのか。彼ら自身の歴史を振り返りつつ、探っていきたいと思う。

三拍子が結成されたのは、2001年のこと。東京アナウンス学院お笑い科で知り合った、北海道出身の高倉陵と東京都出身の久保孝真によって結成された。東京アナウンス学院の出身者には、土田晃之・トップリード・アイデンティティ・火災報知機など、太田プロに所属する芸人が多かったが、三拍子はサンミュージックに籍を置くことになる。結成から一年後、三拍子は『爆笑オンエアバトル』に出場。オンエアを果たす。また同年、『M-1グランプリ2002』において、準決勝に進出する。かなり早いうちから、コンビとしての実力は評価されていたのだ。

2006年には、初の単独作品『三拍子 ~三寸の楔~』をリリース。結成五年目、コンビとして最初の全盛期を迎えていた頃の作品で、収録されている漫才やコントも非常に完成度が高い。その二年後の2008年には、『爆笑オンエアバトル』第10回チャンピオン大会ファイナルで、トータルテンボスに続く二位という結果を叩き出す。惜しくも優勝は逃したが、その全力を注ぎこんだ漫才には、多くのお笑いフリークが感動を覚えた。同年、今作『三拍子 in エンタの味方! 爆笑ネタ10連発』及び『三拍子単独ライブ「SoulMate」』の二作品をリリース。やはり完成度の高いネタが収録されている。

三拍子が過去にリリースした三枚の単独作品には、ある一つの共通点がある。その共通点とは、いずれの作品にも、高倉オリジナルの言葉遊びが収録されているというものだ。

単独ライブを収録した二作品には、「ショート一言」というネタが収録されている。これは、高倉が慣用句やことわざを中心にモジったボケワードを次から次へと繰り出していき、それを久保が一つ残さずキャッチしていくというもの。そのワードだけでもボケとして成立しているのだが、ただ単にツッコミを入れるだけではなく、時にボケ返したり、時に冷たく突き放したりする久保のツッコミが冴え渡っており、とても面白い。今作『エンタの味方~』に収録されているのは、「三拍子の絶対使える新しいことわざ」というもの。こちらもまた、高倉が適当にモジったことわざが中心に展開する。

これらの映像から察するに、三拍子というコンビの芸風は“言葉遊び”が主軸になっているようだ。確かに、思い返してみると、漫才の中で高倉が口にするボケには、言葉遊びを用いたものが少なくなかった。しかし、それらのボケは、意識しなくては見つけることが難しいほどに、地味でさりげなく吐き出されていたように思う。

その理由は恐らく、高倉がボケ役として非常に器用であるためだろう。高倉のボケは言葉遊びに限らず、その巨大な眼球を剥き出しにした顔芸に始まり、奇怪かつ俊敏な動作によるものや、「おっちょこちょい」を「おっぽこぽい」と言い間違えるようなナンセンスもの、一方でオーソドックスなスカシ芸にまで至る。そのボケの表現手法は、とてつもなくバリエーション豊かだと言えるだろう。そして、それらバリエーション豊富なボケが、高倉の武器である筈の“言葉遊び”の印象を薄めてしまっているのである。とはいえ、ボケのバリエーションが多いということは、いずれ彼らにとって大きな武器になるだろうとは思うのだが……挫けずに、精進してもらいたい。

彼らの当面の目標は、とにかくクオリティを下げることなく、自身の漫才を貫き続けることだろう。とはいえ、去年に行われたM-1グランプリ2008において、三拍子がどういうわけか三回戦落ちとなってしまったことが、少し気にかかる。間もなくリリースされる予定の『三拍子 in エンタの味方! 爆笑ネタ10連発 ファイナル』にて、その面白さを再確認させてもらいたいところだが……果たして。