菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『クワバタオハラ単独ライブ 愛・恋・LOVE』

クワバタオハラ単独ライブ 愛・恋・LOVE [DVD]クワバタオハラ単独ライブ 愛・恋・LOVE [DVD]
(2009/06/17)
クワバタオハラ

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以前、レンタルビデオで『芸腕グランプリ』なる作品を借りたことがある。

ホリプロに所属している若手芸人たちがネタで競い合うライブの様子を収録しているビデオで、出演者には「つぶやきシロー」「アリtoキリギリス」「フォークダンスDE成子坂」「坂道コロコロ」「号泣」などの姿が見られた。そんな男臭いメンバーの中にいて、オーソドックスな一人コントを展開する一人の女性芸人の姿が、とても印象に残った。

その女性芸人こそ、後に小原正子と漫才コンビを結成することになる、ピン芸人時代のくわばたりえだった。

今でこそ、妄想的な漫才を展開させているくわばただが、当時の彼女は関西の中年女性を演じたコントを得意としており、その芸風でかなりの爆笑をかっさらっていた。そのスタイルで『爆笑オンエアバトル』にも三度ほど出場していたが、オンエアすることはなかった。

クワバタオハラが結成されたのは、『芸腕ぐらんぷり』から約二年後になる2000年のことだ。当時はどういうネタを作っていたのかは、僕はよく知らない。ただ、気がついたころには、クワバタオハラは妄想ネタを得意とした漫才師になっていた。正直、それほど面白いネタではなかったが、その妄想スタイルの漫才を披露している二人の姿を何度か見かけたので、彼女たちなりのこだわりがそこにあったのだろう。

ただ、その妄想ネタは面白くなかった上、世間でもそれほど評価されていなかった。というのも、くわばたの妄想ネタは、ボケと呼べるほどに突き抜けていなかったからだ。とはいえ、それは「こういう人っているよねー」という類のネタにもなっておらず。正直言って、どっちつかずだったのである。

クワバタオハラ単独ライブ 愛・恋・LOVE』は、クワバタオハラにとって初めての単独作品だ。長めの漫才と長めのコント、それぞれ二本ずつ収録されている。上記の理由から、正直、それほど期待はしていなかったのだが、なかなか面白かった。

そこで披露されているネタは全て、クワバタオハラ女性のコンビであることを百パーセント利用したものだった。女性がモテるために行っている行動の真実、手術を受けている彼氏のケータイ電話を確認してしまう女性の心境、表の顔と裏の顔を使い分ける女性悪役レスラーの心理、成人女性が体験するであろう悲喜こもごも等、女性が生きていく上で身につけていく技巧をエンターテイメント的に昇華していた。もちろん、笑えるネタとして。

この女性らしさをアピールした上で醸し出されている安定感は、彼女たちがコンビとして活動した九年という歳月が決して無駄ではなかったことを意味している。『エンタの神様』での騒動によって知名度を上げたために、どうしてもイロモノ臭いイメージを持ってしまわれがちだが、今回の作品は、そんな悪評を取り払うことが出来るほどの出来だったのではないだろうか。

ちなみに、今回のライブはくわばたが結婚を発表する前に行われた単独ライブなので、くわばたはあくまでもモテないキャラを、くわばたの結婚と同時期に破局を告白した小原はモテるキャラを、それぞれ今作で演じている。その辺りに違和感を覚えるかもしれないが……まあ、ご愛嬌ということで。


・本編(94分)

『ファッションショー』「オープニングVTR」『クワオハ漫才1(男にモテる方法)』「くわばたの恋 こんな恋がしてみたい ~三角関係~前編」『コント1 AM4:00の疑惑』「くわばたの恋 こんな恋がしてみたい ~三角関係~後編」『コント2 ヒール・ザ・ピンヒール』「小原の恋 こんな恋をしていました」『クワオハ漫才2(小原と彼氏の今後を想像する)』「あのポエムを実写化」『ファッションショー』

・特典映像(10分)

「愛・恋・LOVEなメイキング」