菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『子どもさんかん日』

子どもさんかん日 [DVD]子どもさんかん日 [DVD]
(2009/07/22)
内村光良大竹一樹

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小学生の頃、放課後に教室で保護者の人たちが集まって何かしらかの話をしている姿を、何度か見かけたことがあった。その当時の僕が感じたのは、不安だとか緊張だとかそういうことじゃなく、「いつもとは違う何かが起きるのでは?」という期待と興奮だけだった。台風の日のさりげない物々しさや、風邪をひいた日に学校を休んだときに体験できる平日の家の静けさの様に、当たり前の毎日の中に突如現れた“非日常的”な光景を、僕は保護者たちの姿に感じたのである。その興奮はやがて、彼らに見つからないように教室の前の廊下を横切るという行為に発展し、やがて僕の露出狂的な性癖へと繋がっていくのだが、それはまったく別の話だ。嘘だし。

舞台『子どもさんかん日』は、小学校の放課後の教室で、父兄たちが子供の誕生会で披露する出し物について奮闘する姿を描いた会話劇だ。子どもたちの父親役として三村マサカズ大竹一樹森本亮治、野添義弘の四人、ある子どもの母親役としてぼくもとさきこ、彼らのクラスを担当する教師役として蒲生麻由、彼らに関わっていくハイテンションな用務員として内村光良が出演している。劇作・脚本は元WAGEのリーダーで月9ドラマ『婚カツ!』の脚本を担当した森ハヤシが、演出をテレビ番組制作プロダクション「ケイマックス」の社長である工藤浩之が担当している。

この物語に登場している大人たちが小学校の教室の中で話し合っている姿は、僕がかつて体感した教室での大人たちのやりとりを思い起こさせるものだった。ほのぼのとして、楽しそうで、でもちゃんとした話も進めている。何かしらかの目的があって、その目的にゆっくりと進んでいる楽しさ、興奮がこの舞台全体を包み込んでいた。でも、この舞台には、廊下から教室を眺めていた僕たちには感じられなかった空気もある。

当時の僕たちにとって、大人は子どもを守ってくれる存在でしかなかった。でも、大人だって、子どものことを何から何まで理解しているわけじゃない。大人なりに、子どもが喜んでくれるようなことを、真剣に考えている。その考えが煮詰まって、時に子どもが嫌になったり、諦めたり、溺愛しすぎてしまったりする。そんな、子どもは気付いていないだろう大人たちの苦心が、子どもの頃には分からなかった大人の悩みが、この舞台にはあったのだ。

大人になったら、色んなことが分かるようになった。自分の生きている世界の広さも、それぞれの人が抱えている悩みも、世の中がちゃんと動くために必要な義務も、全て大人になってから知ったことばかりだ。でも、大人になったことで、忘れてしまったことだってある。今回の舞台は、そんな子ども時代の記憶を呼び覚ましてくれるような舞台だった。でも、それはきっと、僕がまだ子ども寄りの人間だから、そう感じるだけなのだろう。これから先、僕も人の親になると、この舞台への感じ方が大きく変わってくるんじゃないかと思う。想像でしかないけれど。

最後に、役者陣について。

 

ウッチャンとさまぁ~ずに関しては、前回の『ハンブン東京』と大して印象が変わらず。基本的に、自分というキャラクターが出来上がっている人たちは、何を演じても変わらないということなのだろうか。ただ、大竹さんの役柄は、ちょっと違和感があったかも。ややシリアスな場面で活躍する役どころなんだけど、どうも大竹さんはそういう役が似合わないというか。とことん、ボケ芸人なんだろうなあ。蒲生さんは超美人。基本的に女優に惚れない僕だけど、蒲生さんにはちょっとクラッときた。ああいう人と知り合いになりたい(恋人は無理だということくらいは自覚してるのよん)。初舞台だということで、やや不慣れな印象も受けたけど、今後の活躍に期待できる人だと思う。うん。

森本さんは元ホストの父親という人物を演じていたけど、ちょっと根の真面目さが滲み出ていたような。『ごくせん』でデビューして、イケメン俳優として絶好調活躍中らしい。先物買い? 野添さんはコミカルな演技が出来る中年俳優の人。朝ドラ出演の経験もある実力派ならではの、堂々としたコミカル演技がたまらなく面白かった。特典ディスクでウッチャンも言ってたけど、後頭部をはたきたくなるような演技をするんだよなあ。ぼくもとさんは、もう如何にも舞台女優という感じ。舞台に上がってきた途端、良い意味でも悪い意味でも強烈なインパクトを発していた。


・本編ディスク(123分)

・特典ディスク(76分)

初顔合わせ」「本作品の意気込み」「パンフレット用座談会」「稽古風景」「舞台裏の素顔」「舞台中日インタビュー」「変化し続ける作品」「役者・三村マサカズという男」「カーテンコール」「打ち上げ」