菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

アンガールズ単独ライブ『UNGIRLS PRO』

アンガールズ 単独ライブ 「UNGIRLS PRO」 [DVD]アンガールズ 単独ライブ 「UNGIRLS PRO」 [DVD]
(2009/07/24)
アンガールズ

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アンガールズの単独ライブを観る。もちろん、直接観に行ったわけではない。自宅で観るのである。ライブの模様を収録したDVDを観るのである。改めて、こんなことをわざわざ書く必要はないような気がするが、今回は上手い書き出しが思い浮かばなかったので、こういう感じに書き出してみた。実際に感想文を書いてみれば分かると思うが、書き出しこそ一番面倒臭いのである。書き出し部分さえ書ければ、後はスラスラと書き進むのだ。もしも、世の中に「書き出し専門家」なる職業が存在すれば、そこそこ小説家やライターにウケるのではないかと思う。わざわざ書き出しのために金を払うような人間がいるかどうかは知らないが。

今回の単独ライブ、タイトルは『UNGIRLS PRO』。過去三度の単独ライブでは『88』『チェルニー』『アンデルセン』と、広島に関するタイトルばかりを取り上げてきたアンガールズ。そんな彼らが、初めて広島とは無関係の、しかも自分たちのコンビ名をライブタイトルに取り上げている。これは即ち、今回のライブに対して、彼らが強い思いを込めているということを意味しているのだろう。してないかも。

オープニングアクトは、前回の公演では封印されていたショートコント。前作の感想で「彼らはショートコントを捨て、新たなるステップを踏み出した」などと書いた人間としては、赤面するばかりである。ただ、久しぶりに観たアンガールズのショートコントは、全て新作ながらも安定したクオリティを見せており、かつて彼らがテレビに出始めていた頃を、仄かに思い出させてくれた。やっぱりアンガールズはショートコントだな。無意識のうちに、そんなことを考えている自分に気付く。しかし、その考えは即座に打ち砕かれる。次々と展開していくアンガールズのコントに、僕はただただ爆笑し続けるしかなかった。やや変化球型のコントが多かった『アンデルセン』に対し、元来のアンガールズスタイルを貫いていた今回のライブは、ただただシンプルにアンガールズならではの面白さを見せつけていた。

そんな中、過去に類を見ないほどに強烈な印象を、僕に与えたコントが一本だけあった。タイトルは『いいこと思いついた』。山根の家に遊びに来た田中が、そこで出されたサンドウィッチの消費期限が切れていることに対し、ブチ切れて山根に金を要求するというコントである。これまで田中は、あまりにもヘタレでどうしようもない人間を何度か演じてきたことがあったが、この『いいこと思いついた』で演じているキャラクターは、それまでのキャラクターに対して、あまりにも酷かった。下衆と言っても良いだろう。このコントでの、山根が田中を逆に追い詰めていくシーンは、今回のライブのベストアクトと言っても過言ではないだろう。

また、今回の単独ライブでは、アンガールズ『漫才』を披露しているという点も見逃せない。M-1グランプリ2003に出場していた経緯もある彼らだが、単独ライブで漫才を披露しているのは今回が初めてのことである。その出来・不出来はともかくとして、彼らがコント以外の笑いを追及するようになったことは、とりあえず喜ばしいこととして受け入れていくべきだろう。次回の単独ライブでも披露されると良いのだが。

そして、最後のコントが披露される。『番組制作』。前回の公演と同様、感動的な結末を迎えるロングコントだ。これまでのアンガールズならではのコントとは違い、このコントはあまりにもストレートに感動路線を突き進んでいた。それはつまり、このコントをアンガールズが演じる必要性が薄いということである。オーソドックスなアンガールズコントを追求してきた今回のライブだが、ここで少し拍子抜けしてしまった。今後の課題だと言えるだろうが、前作よりもテレビ的になってきているため、今後はこの路線で突き進んでいくことになるのかもしれない。

それでも鑑賞後、なんともいえない満足感が僕を包み込んでくれる。第一次お笑いブーム全盛の頃、その特異なビジュアルと不可思議なコントを武器に、お笑いの最前線へと飛び込んできたアンガールズ。この満足感は、彼らの着実に熟し続けているコントを堪能することが出来たからこそ、味わえた喜びの味なのだろう。ロングコントだけは、もうちょっと考えてもらいたいけど。


・本編(88分)

『オープニング』『立会い』「「単独ライブで何をすればいいか?」田中の母に聞いてみる(前編)」『バレーボール』「ドキュメント2009「古代の謎を探れ!」」『いいこと思いついた』「「単独ライブで何をすればいいか?」田中の母に聞いてみる(後編)」『漫才』「検証 アンガールズはテレビで見るより男前なのかin巣鴨」『卓球』「ほんとにあった呪いのビデオ」『パワハラ』「田中の検索ワード履歴」『番組制作』

・特典映像(7分)

「山根、後輩へ説教」「ほんとにあった呪いのビデオNGシーン」