菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『チハラトーク #4』『チハラトーク #-4』

チハラトーク#4 [DVD]チハラトーク#4 [DVD]
(2009/07/26)
千原兄弟

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以前から何度か触れていることなので、知っている人も多いと思うが、僕は『チハラトーク』があまり好きではない千原兄弟という芸人自体は、嫌いではない。彼らのコントはいつも刺激的で、斬新で、とても強烈な個性を持っている。そんなコントを生み出すことのできる芸人を、誰が否定できるだろうか。芸人としての千原兄弟を否定できる人間なんて、ろくに彼らのコントを観たことのないトーヘンボクに違いない。勝手な決め付けだけど。

ただ、どうも残念なことに、人間としての千原兄弟のことを、僕はあまり好きではないみたいなのである。いや、厳密に言うなら、人間としてというよりも、話し手としての彼らが好きではないと言うべきなのだろう。更に言ってしまうと、千原兄弟のことというよりも、千原ジュニアと限定すべきだろう。つまり、まとめると、僕は話し手としての千原ジュニアが、あんまり好きではないのである。うん。そういうことだな。うん。

でも、千原ジュニアの話が面白くないのかというと、そうとは思わない。話はしっかりと組み立てられているし、ちゃんと意外性のあるオチも準備されていて、面白い話に仕上げられている印象はある。ただ、これは僕の常識が足りないだけなのかもしれないが、ジュニアの話はどうも同意できないことが少なくないのである。

ジュニアの話の多くはボヤキである。周囲の人間に対するボヤキ、偶然居合わせた人間に対するボヤキ、目の前にいる兄のせいじに関するボヤキ……ジュニアは身の回りの殆どをネタの対象として捉え、ボヤキとして昇華している。が、このボヤキという笑いは、他者が同感するような話であることが前提となっている芸だ。的外れなボヤキは、単なる個人の愚痴でしかなく、笑いには昇華しづらい。ジュニアのボヤキもまた、愚痴となっているだけのことが多い。にもかかわらず、ジュニアはそれらの愚痴を、まるで自らが正しいのであると言わんがばかりに、ボヤくのである。その態度が、どうもいけすかない。……じゃあ買うな、じゃあ観るなと言われたら、もう何も言えないのだが。

そんな印象のあるジュニアが、今作では古典落語『死神』を披露している。あるテレビ番組で披露したものの再演らしいのだが、オチが彼なりに改変されており、なかなか面白かった。やっぱり、芸人としての千原ジュニアを、僕は好きなようだ。うーん、なんとも難しい関係だ。

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(2009/07/26)
千原兄弟

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一方の『チハラトーク #-4』では、ジュニアによるせいじの話が炸裂。日ごろ、ガサツな人間として知られているせいじがジュニアのボヤキの対象となると、他者に対するボヤキよりもマイルドに感じられるのが、なんだか不思議だ。それはきっと、せいじという人間の絶妙な懐の広さが、そうさせているのだろう。純名りさに「あいつムカつく!」と言われたらしいが。個人的には、アル中の女性に関する話が印象に残っている。ガサツでたまに何を考えているのか分からないこともあるせいじだが、根っこの人間性はなかなか良い人……なのかもしれない。かもかも。


・『チハラトーク #4』(本編:132分)

・『チハラトーク #-4』(本編:76分)