菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『イッセー尾形のひとり芝居07-08 THE BEST vol.1』

『イッセー尾形のひとり芝居07-08 THE BEST vol.1』

ブログのコメント欄で、イッセー尾形の新作DVDがローソン限定でリリースされていると教えてもらう。以前は、amazon限定でDVDをリリースしていたイッセー氏。どんどん購入経路を狭めているのは、どういう意図があってのことなのだろうか。そうした方が、値段が安く済むのだろうか。実際、このDVDは1,500円という超安値で手に入れることが出来るという。コンビニで予約しなくてはならない手間が面倒臭いが、やはり1,500円という価格設定は魅力的だ。

しかも、単にネタを収録しているわけではない、らしい。なんと、イッセーの舞台演出を担当している森田雄三氏による、副音声解説を収録しているというのである。イッセーのネタだけでも嬉しいのに、そこへイッセーのネタの最大の理解者である森田氏のコメントが入るとなると、見逃さないわけにはいかない。思い立ったが吉日という言葉の通り、情報を頂いたその日のうちにローソンで予約してきた。そして、その一週間後、無事にDVDを手に入れるに至ったのである。ゴッドタンのDVDなどいらぬ! 私にはイッセー尾形のDVDがあるのだから!(キツネとブドウの話的な何か)

家に帰って、早速再生してみる。1,500円という値段に少なからず不安を覚えていたが、画質はかなり良い。一方、ちょっと音質は悪いが、聞き取れないほどではない。ところどころで音が割れていた気もするが、大して気にするほどではない。お笑いライブのDVDとしては、及第点といったところか。収録されている演目は、全部で七本。パッケージ裏には、その演目の初演時期も掲載されている。最も古いネタは2006年12月初演の『三茶』『ダーザイン治』の二本で、最も新しいネタは2008年5月初演の『再婚動物園』『幻の魚』の二本。どれも、クセモノの演目ばかりだ。

定年したサラリーマン、再婚相手の娘に翻弄される中年女性、哲学を歌うミュージシャンなど、今回の舞台でもイッセーは様々なキャラクターを演じている。中でも面白かったのが、『ホテルマン』という演目。見識の浅い高校生がホテルの面接を受けている様子を描いた『三茶』の続編で、この高校生がホテルマンとして接客している姿を描いた演目だ。この『三茶』もかなり面白いが、『ホテルマン』のストレートなバカバカしさには適わない。

ここで『ホテルマン』の粗筋を書いてみることにする。舞台に灯りが点ると、ホテルマンがキョロキョロしながら立っている。周りに人はいないらしく、一人でエアギターのフリなんかをしている。いわゆるプロフェッショナルという感じではなく、まだまだ職場に慣れていない雰囲気だ。と、そんな彼の前に、301号室のお客がやってくる。覚えたてのマニュアル口調で答えるホテルマン。名前はカサイというようだ。301号室の客は、部屋が寒いという。

寒いから、どうにかしてくれという客。戸惑いながらも、マニュアル通りの対応を取ろうとするカサイ。部屋には空調があるので、それで暖かくなる筈……と説明するが、客は暖房にならないという。「冷房を28℃にした」という客。それに対し、「あ、自分……28℃で冷房したことがないんで……ちょっと分からないんスけど、ハイッ」。客のボケた行動に対して、きちんと対応しきれていないあたりが、妙にリアルでおかしい。この後、話は「ストーブを準備する→カサイが家から持参する」「毛布が欲しい→睡眠中のホテルマンの先輩に毛布の確認をする→指令:トボけろ」と、なんともグダグダとした展開になっていく。これが面白い。こういうネタが1,500円で観られるというのは、やっぱり良い時代である。どの程度の儲けが出ているのかは知らないが、とにかく良い。需要者にとっては、実に良い。

今作は2009年11月現在も、ローソンのLoppiにて注文することが可能だ。しかし現時点で、今作の注文は2009年12月31日で終了するとのこと。イッセー尾形の一人舞台を体験してみたい人、イッセーの演目作りの裏話を聞いてみたい人、イッセーにはそれほど興味がないけどピン芸には興味があるという人は、急いでローソンで注文してきた方が良いと思う。なにせ、1,500円だもの。どうにもこうにも、1,500円だもの。……金の話ばっかりしてるネ、なんか。うーん。


・本編(75分)

『東京駅』『三茶』『ホテルマン』『再婚動物園』『砂丘』『幻の魚』『ダーザイン治』

・特典映像(23分)

イッセー尾形×森田雄三「どうやってつくったっけ?」」

「着替えシーン(イッセーコメント付)」

・副音声:森田雄三「ネタの骨組み」