菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『フラミンゴ CONTE COLLECTION Pink』

フラミンゴ コントコレクション「Pink」 [DVD]フラミンゴ コントコレクション「Pink」 [DVD]
(2009/10/21)
フラミンゴ

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東京03の優勝によって締めくくられた、先日の「キングオブコント2009」。思えば、トリオの芸人が何かの大会で優勝している姿を見たのは、これが初めてだった様な気がする。若手芸人の登竜門的番組と言われ続けて、先日とうとう放送開始十年目に突入した「爆笑オンエアバトル」でも、日本一の漫才を決定する年末の恒例行事「M-1グランプリ」でも、トリオの芸人が優勝したことは一度たりともなかった。

どうしてトリオの芸人は、お笑いの賞レースでなかなか優勝できないのか。その理由を単純に考えると、単なるボケとツッコミのみで構成することのできるコンビに対して、トリオの場合はボケとツッコミに加えて、別の新しいポジションが必要となってしまうために、コンビよりも少し複雑で分かりにくくなってしまうからではないだろうか、と思われる。で、その分かりにくさを打ち消すために、ボケを二分する(小ボケと大ボケに分ける)という手法を取っているトリオも多いが、そうすると今度はトリオである必要性が薄れてしまう。なかなかにデメリットの多い構成だ。

それなのに、このところのお笑い界ではトリオのユニットが増えてきている。先のお笑いブームの頃からトリオとして注目されていたロバート、森三中インスタントジョンソン安田大サーカスあたりを除いても、ななめ45°、我が家、Bコース、ザ・ゴールデンゴールデン、ビーグル38、鬼ヶ島、三福星GAG少年楽団など、数え上げればキリがない程のトリオたちが、注目され始めている。これは恐らく、ショートネタによるシンプルな笑いに食傷気味になった人々が、やや分かりにくい複雑なトリオのネタに注目を寄せるようになったから……だと考えてみたりもするのだが、実のところは分からない。

フラミンゴも、そんな近年のお笑いブームで注目され始めたトリオなユニットの一組だ。メンバーはかなり低身長のオレンヂ、ちょいデブの吉田ウーロン茶、ちょいイケメンの竹森千人によって構成されている。なんとなく、我が家を彷彿とさせるフォーメーションだが、彼らは別に「言わせねぇよ!」とは言わないし、下ネタも連発しない。ちなみに、メンバー全員がそれぞれにコンビを結成し、解散したという経歴の持ち主だ。そういえばトリオのユニットには、かつてコンビを結成していた芸人たちによって結成された……というものが多い気がする。調べてみたら、ちょっと面白いかもしれない。

フラミンゴの本芸はコントだ。オレンヂのことを女性ではないかと疑ってかかるコント(『女疑惑』)や、メンバー全員がお互いの母親と結婚してしまうコント(『お母さん』)、メンバー全員が目的を勘違いしたまま集合してしまうコント(『AM 10:00』)など。普通には起こり得ないだろう世界が、彼らのコントでは繰り広げられている。そこにはちょっとだけシュールの匂いが漂っているが、しかし彼らの笑いは決して分かりにくくない。独特の世界観でありながら、その内実は非常にシンプルで、ちゃんと分かりやすく出来ているのである。そんな、シュールとエンターテイメントの絶妙なバランス感覚こそ、彼らの最大の特徴であり、武器であると言えるだろう。

一方、シュールさを打ち消して、エンターテイメント性のみが前面に押し出されたネタもある。その名も「フリ○○シリーズ」だ。竹森演じる“フリ○○さん”が、オレンヂ・吉田の両名に無茶なネタをフリ続けるというだけのコントだ。今作にも、『お父さん』というタイトルで、『フリ父さん』というネタが収録されている。まあ、はっきり言ってしまうとちょっとしたモノマネ芸が連打されるだけなのだが、このフリ場面とモノマネが上手く合致していて、かなり面白い。彼らはこのスタイルで「エンタの神様」にも出演していた。だからてっきり、彼らはすぐに売れてしまうものだと思っていたのだが……まだ売れていない。原因は分かっている。彼らには、圧倒的に華が足りないのだ。華さえあれば、とっくに売れていてもおかしくないのだが……難しい世界だ。

まだまだショートネタ人気の根強い昨今のお笑い界、トリオコント師たちの多くも、ショートネタ仕様のコントを次々に発案し、どうにか波に乗ろうと試みている。そんな時代の中で、フラミンゴは独創的なコントをただひたすら淡々と生み出し続けていく。時代の波に乗る者と、その波の下を潜り続ける者。どちらの選択が正しいのか、その答えが出るのはいつの日か……? なんにせよ、もうちょっと売れてほしいトリオである。


・本編(75分)

『OPムービー』『女疑惑』『お母さん』『イスとりゲーム』『菊池』『お父さん』『恋の予感』『核恋慕(かくれんぼ)』『AM 10:00』『神様』

・特典映像(42分)

「Pinkの舞台裏」「オレンヂのものまねしりとり とうきょう編」「dream(吉田ウーロン茶)」「竹森千人の超おもしろ釣り堀」