菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『どぶろっく「ほっといてくれんさい」』

どぶろっく「ほっといてくれんさい」 [DVD]どぶろっく「ほっといてくれんさい」 [DVD]
(2009/11/25)
どぶろっく

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どぶろっく。渋い名前だ。恐らく、お酒の“どぶろく”と音楽の“ロック”をかけているのだろうが、実に渋い。主に“どぶろく”が渋さの要因なのだろう。どんなお酒なのか知らないのだが、なんとなく渋い印象を与えてくれる。和の雰囲気を感じさせられる、とても良い名前だ。過去に、同じ名前のブルースバンドがいたとしても、まったくおかしくはない。それなのに、芸風はああいう感じなんだから、なんだか世の中間違っている。

あらびき団』を中心に活動しているどぶろっくの芸風は、男のエロい視線で女性の卑猥な部分を無駄な歌唱力で表現するという、弩がつくほどの下ネタアカペラだ。天津木村のエロ詩吟の様に捻りのある下ネタではなく、殆ど捻りのないストレートな下ネタで作られたそれらの歌は、なんだか大人ぶった中高生がまだ未熟な後輩たちに語っている性教育の授業の様で、イヤらしいというよりもどこか微笑ましい。一方、具体的なシチュエーションを歌った『魅惑の高橋さん』の様な曲は、モテない男のイヤらしい視線が見事に表現されており、非モテと呼ばれている人たちの心をガッチリと掴み取っている。……掴まれてるなあ。

『どぶろっく ほっといてくれんさい』には、そんな彼らのネタ映像が収録されている。お馴染みの歌ネタは勿論のこと、テレビではあまり見せたことがないスタジオコントやライブコントの映像なども披露されており、まさに傑作選と言える内容だ。

どぶろっくの歌ネタは女性と縁のない男たちに共感されるような下ネタばかりだったが、この傾向はコントにも少なからず反映している。今作で披露されているコントを見ても、試合前のボクサーが対戦相手の控室にケータイの充電器を借りに来る『ボクシング(タイトルマッチ前)』、説明の余地が無い『男子トイレ』、元AV男優の男が相撲取りの弟子を志願する『新弟子男優』など。吉田拓郎の名曲の一節から取ったのだろうタイトルに違わない、じんわりとした男臭さが醸し出されている。

が、この男臭さは、あくまでも“じんわり”としたものでしかない。彼らの個性と呼ぶほどに強烈なわけでもなければ、濃厚なわけでもない。ただ、あくまでも、“じんわり”と感じ取れる程度のものでしかないのである。それ故に、現時点での彼らのコントは、とてつもなく普通だ。ここから更に高みを目指すために、彼らにはなお男臭い笑いに邁進してもらいたいところである。うーん、偉そうな物言い!


・本編(69分)

「オープニング」「ボクシング(タイトルマッチ前)」「男子トイレ」「歌ネタ その1」「オ・ン・ナ~第1章2章3章4章歌詞ミックスダブル~」「自殺」「ギネス」「歌ネタ その2」「ブルマ~モテ期~聖夜」「ボクシング(タイトルマッチ後)」「Pretty Ossan」「歌ネタ その3」「卒業」「俺の親父のラーメン屋」「新弟子男優」

・特典映像(12分)

「キャバクラのシチュエーションで歌わせてみた!」「歯医者で恋して」「レコーディング風景をPV風にしてみた」