菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

笑魂『ビーグル38 んな、アホな…』

ビーグル38「んな、アホな…」 [DVD]ビーグル38「んな、アホな…」 [DVD]
(2009/11/26)
ビーグル38

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“老人漫才”でお馴染みのビーグル38。その漫才を初めて観たときは、彼らが元“せんたくばさみ”だということにまったく気付かなかった。“せんたくばさみ”のことは、「爆笑オンエアバトル」で何度かネタを観たことがあったんだけれど、その当時のイメージから、こういうハネかたをするユニットになるとは想像もしていなかったからだ。“せんたくばさみ”の頃の彼らは、とてもフツーのネタを演っていた。面白いといえば面白いけれど、何か印象に残るほどの衝撃を残すタイプの芸人ではなかった。そんな彼らが、こういう売れ方をするだなんて、いったい誰が予想できただろう。

ビーグル38の“老人漫才”は、そのシンプルで分かりやすい見た目にも関わらず、内容は意外と複雑だ。まず、能勢ヒロシ演じる“師匠”の喋りで、心を掴まれる。師匠の喋りは喜味こいし師のそれと瓜二つで、その味わい深い喋りから、観客は今から夢路いとし・喜味こいし師匠の漫才パロディが始まるのではないかと想像する。

ところが、いざ始まってみると、加藤統士演じる相方の井上さんが何を喋っているのかまったく聞こえない。聞こえないけれど、漫才は勝手に進行する。観客は置いてけぼり。でも、師匠が井上さんのボケに対してツッコミを入れることで、観客は井上さんがどういうボケを放ったのかが大まかに想像できる。ただ、この師匠のツッコミが、常に観客の想像の斜め上を行く(例:「それはエアロスミスやないか」)。それが笑いの繋がる。この辺りが実に上手い。

ビーグル38の初めての単独作品『んな、アホな…』は、そんな彼らの“老人漫才”を四本、老人キャラが炸裂するコントが四本、師匠が弟子の漫才師とアレコレするコントが一本、計九本のネタが収録されている。決して急ぎ足にはならず、淡々と展開する彼らの漫才は、一言一言の爆発力を重視したキョーレツなネタの数々は、彼らが典型的な一発屋ではなく、言葉の選択を重要視した“漫才師”だということを示している……のかもしれない。

なお、今作には、テレビではあまり見かけることのない第三の相方こと、中屋卓もコントに出演している。老人二人のナンセンスなやりとりを見せつけられる第三の一般人として出演している彼の奮闘も、また見どころの一つである。彼の存在を、しかと確認してもらいたい。……ところで、普通にトリオ漫才はもうやらないのかな? そこそこ有名になって、バラエティにも出るようになったら、また普通の漫才にも挑戦してもらいたいなあ。


・本編(35分)

「漫才「ああ温泉旅行」」「オーディション」「漫才「カラオケ」」「デリバリーピザ」「漫才「憧れのファーストフード」」「公園」「漫才「お笑いブーム」」「ファミレス」「師匠に言われて嬉しい一言」

・特典映像(4分)

「誕生秘話」